はじめまして、VIVITAのソフトウェアエンジニアのかっしー(@kassy_vvt)と申します。 本稿では弊社が運営するVIVISTOP柏の葉にて開催したロボットコンテスト「VIVITAロボコン」の企画・運営について語らせていただきます。(技術面や当日の様子、各チームの紹介はまた別の機会にさせていただければと)
大人主催の第一回ロボコン
2017年8月、VIVISTOP柏の葉にてロボットコンテストを主催しました。
第一回目のこの大会は,ルール設定,機材準備,マニュアルの作成など,全て我々大人が取り仕切った上で開催しました。その大会で優勝した小学5年生の子がお立ち台で(弊社社長もいる前で)とんでもないことを言いました。
「次はかっしーと協力して、チームで協力してミッションに挑むロボコンをやりたい」
弊社社長も力強く「やりましょう!」と返します。その時は優勝したことで一時的にテンションがハイになってるだけかとも思いましたが、違いました。
小学生とガチの企画会議
数週間後、その子がVIVISTOP内のホワイトボードに僕との打ち合わせに備えてアジェンダを書いて待ち構えてたんです。直感が強烈に告げます「あ、ヤバイ、こいつは本気だ」と。ロボコンを終えて燃え尽き寸前だった僕にも再び火がついた気がしました。
その後は毎週土日が打ち合わせの時間になります。ルールはどうしようか、ステージはどうしようか、開催日はいつにしようか、等など。打ち合わせでもとんでもないアイデアが次々と飛び出します。
- 「チーム戦で、チームは大人と子どもがペアになるようにしたい」
- 「ステージは陸海となりあわせのステージに」
- 「陸ロボ海ロボが互いに協力しないと1点もとれないようなルールに」
- 「ステージの仕掛けは動きを伴うギミックを」
打ち合わせ中の僕は完全にビビってました。何にビビるって、僕の脳内に潜む架空の上司ゴースト(念のため:実在しません)はこんな企画絶対に許してくれないんですよ...
- 「前例がない」
- 「大人と子どもがペアなど、大人の数が足りないに決まってる無理無理」
- 「この(VIVISTOPが入居する)お洒落なT-SITEで海を作るなんてできるはずがない」
- 「本屋の本が濡れたらどうする誰が責任を(ry」
実現した今だから「何を大げさな」と思われるかもしれませんが、当時は本当に「それは無理じゃねーかなー...」と思ってました。かろうじて口に出すのだけは我慢してました。でもビビりまくってるチキンな僕とは裏腹にその子の目は生き生きとしてて、実現できると信じて疑っていないんですよ。もう腹をくくるしかないじゃないですか。
本格的にスタートした陸海協力ロボコン企画
それからは海ステージを含むステージ全体の設計・開発と、参加者にロボットを作ってもらうための工程の基本を示すオープンソースハードウェア「テンプレロボ」の開発を並行して進めていきました。その子は会議でも大人となんら変わらない理解力で企図を汲み取って自分で仕事を見つけ、こなしていきます。VIVISTOP内に無い材料が必要になったらホームセンターに買い出しに行ったり、高額な材料が必要なときにはスライドを作って購入申請を投げたり、プール設置に向けてVIVISTOPのクルーと相談したり。次第に僕はその子を子ども扱いしないようになっていきました。
海ステージは最初はT-SITEの教室外のベランダにたらいを置かせてもらってそこに水を張って実験していました。ベランダは教室の空き時間しか使えなかったので実験はいつも夕方(16時半以降とか)で11月に入ると暗いし寒いし水は冷たいしでなかなか過酷な環境でもありましたが、その子は全く弱音を吐きもせず作業をします。(僕は弱音吐きそうになるのをかろうじて口に出さないようにギリギリ我慢するのが精一杯...)
他のクルーやテナント主のT-KIDSの方々にもだんだんと我々のやりたいことが伝わっていたようで、色々と調整いただき12月中旬にはVIVISTOP内にプールを置かせてもらえることになりました。テンプレロボやステージギミックの開発にもVIVITAのエンジニア陣が大いに協力してくれました。
いよいよ協力ロボコン製作期間スタート
1月に入り、いよいよ協力ロボコンの製作期間が始まり、出場者募集を行いました。当初のアイデア通り、2人チームで大人と子どもがペアを組んでもらうことになります。予想はしてましたが、子どもの数に対して大人が足りません... 柏の葉勤務のクルーを総動員したのはもちろん、普段VIVISTOPに行かない東京オフィス勤務のエンジニアや事務の方、果ては親会社の方々に何回も何回もお願いしたりしました。が、ダメッッ。(まだ足りない)
そこで外部の大人の方々にも参戦をお願いすることにしました。ボランティアで来ていただいている中学生、大学生、会社員、地元ベンチャーの社長、ついには市議会議員の先生にまで参戦いただきました。皆様お忙しいにもかかわらず、時間を割いてパートナーの子どもとの作戦会議やロボット開発に勤しんでいただきました。皆様のお陰で全ての子どもにペアの大人を割り当てることができ、競技を成立させられただけでなく、VIVITAクルーでは成し得なかった様々な風を吹き込んでいただきました。お陰でロボコンの楽しさが倍増しました。本当にありがとうございました。
合計24チーム48人が参加することになったこのロボコン、開催日までの3ヶ月間で僕は(役得なことに)全てのチームの開発工程を見学させてもらえたのですが、本当に各チーム進め方やロボットの形状、チームメイトとの関係性がさまざまで、とても見ごたえのある群像劇のようでした。忙しい大人を子どもが頑張ってカバーしたり、女子同士で女子会のようなトークを弾ませながら開発したり、逆にお互いあまり言葉をかわさずに黙々と作業したり、なかには最初すごく険悪なムードだったチームが最終的にガッチリ握手する実に頼もしい関係へと変貌したりと、子どもだけでなく大人も含めて成長を間近で感じられました。金色のガッシュ*1を見てるときのような感動がこみ上げてきます。「大人と子どもでチームを組む」という無茶に見えたアイデアを却下しないで本当に良かったと思いました。
振り返って
ここまで振り返って、本当にこのロボコンは大人の力だけでは実現できなかった素晴らしいイベントになったと思います。「大人が子どもに対して何かしてあげる」ではなく「大人が子どもの力を借りてより良いものを作る(むしろ大人が子どものお手伝いをする)」という僕にとっても稀有な体験でした。VIVITAという環境の特殊さ、素晴らしさがうまく生かされた事例になったと思います。
ロボコン本戦と今後
2018年3月31日に本番大会「VIVITA ROBOCON 2018 SPRING」を実施しました。52台もの多種多様なロボットが登場し、参加者同士はもちろん、見学に来てくださった保護者の方や一般の方、パブリックビューイングを実施してくださいました沖縄県うるま市、高知県土佐町の方々にも楽しんでいただけたのではないかと思います。ロボットが機構を駆使して技を繰り出したり、チームが点数を獲得したりするたびに、会場には大きなどよめきと歓声があがり、大盛況でした。
ロボコン本戦では29点満点中24点という圧倒的高得点を叩き出したチーム「柏の葉 自衛隊」が優勝しました。ちなみに大人の人数の都合で僕も競技者として出場しましたが、結果は8点でした。なお、僕は「自分は主催者だし他の競技者に花をもたせよう」などという発想は一切しておらず、自分が優勝する気満々で挑んでいました。(自分の競技後に本気で落ち込んでるせいで以降の僕の司会マイクのテンションが明らかに下がってました... 申し訳ありませんでした...)
優勝チーム「柏の葉 自衛隊」の子はお立ち台で第一回の優勝者同様「次はこんなロボコンがやりたい」と宣言してくれました。その内容はまたとんでもないものでまた僕は既にビビってます。次はどんな大会を創り上げていくことになるのでしょうか。子ども一緒に作る未来は予想できないけどとてもワクワクします。今後もVIVITAをそんなワクワクする未来がたくさん生まれる場所にしていけたらと思います。
*1:週刊少年サンデーに連載されていた漫画作品。魔界の子と人間がタッグを組んで戦うバトル漫画。超名作