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VIVIWARE Cell for ART - 写真家 Rie Yamada さん

VIVIWARE Cell for ** とは?!

おもちゃ・電子楽器・ロボット・デジタルアートなどのインタラクティブなアイディアを気軽に試作することができるプロトタイピングツール VIVIWARE Cell (旧 VIVIPARTS) の活用事例を紹介するシリーズです。

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米WIRED への掲載やドイツでの写真新人賞 ”gute aussichten junge deutsche fotografie" の受賞などご活躍をされているドイツ在住の写真家 Rie Yamada さん。なんと、新作の制作に弊社の VIVIWARE Cell を活用してくださいました。

今回は、その作品についてRie Yamadaさんにインタビューしました。VIVIWARE Cellがどのような表現に活用されたのか、ご紹介します。

現代社会の家族観を表現した 写真 × インタラクティブ の アート

—— 現代社会ににおける家族やそのあり方をテーマにされたインタラクティブな作品ということですが、どのような作品か説明をお願いします。

現代の人々の家族の価値観や家族を、どのように築く(相手を見つける)かにフォーカスした作品です。

鏡台だと思い椅子に座ったお客さんは、鏡に映った自分の姿を見ることから始まるのですが、椅子に座ることでセンサーが反応すると、前面の鏡の中に婚活パーティーに参加していた男性の映像(実際は作家本人が再現したもの)が映し出されます。

実はその鏡は取調室などで使われるマジックミラー(ハーフミラー)で、鏡の裏側にはディスプレイが隠れています。鏡に映る左右反転した自分の姿は本来の自分ではなく、そこに映し出される男性陣もまた本来の人物ではありません。

パーティーも同じことで、人々は自分自身を演じています。相手はまるで鏡のようで、人は相手を通して自分の価値や存在を確認させられます。また、婚活パーティーに向けて自分を整えたりお化粧をするという事を想起してもらえるよう、鏡の前に座るという手段で制作を進めました。

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—— どうして婚活をモチーフにされたんでしょうか?

家族をテーマに「過去編」「現代編」「未来編」の三部作をつくろうとしていて、前作は家族写真を用いた作品でした。家族というテーマを考察し、作品を制作するとなると、どうしても「結婚」というキーワードが浮かび上がってきます。特に日本では「結婚しなさい」という上の世代からの社会的な圧力や、夫婦別姓・同性婚が認められてないといった問題もありますが、私は「結婚」がゴールであるような考え方に疑問を持っていました。

特に「婚活」は日本独自の文化のようで興味深いです。ドイツ人に話してもほとんどの人が知らないようでした。もちろん、Tinderなどのマッチングアプリはヨーロッパでも盛んなのですが、あくまで恋人や遊ぶ相手など、パートナーを探すのが目的です。日本のように男女が「結婚」を前提として会うという文化は特殊ですね。

ちなみに作品を制作する上で、私も何度か婚活パーティへ参加してみたんですよ。良い出会いには恵まれませんでしたが。(笑)

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—— ドイツで「婚活」をモチーフにした作品を発表をされるというのは、とても面白そうです。どのような展示会に出展されたんでしょうか?また反応はどうでしたか?

ドイツの写真美術館で行われた、 FRAMING IDENTITY*1 というジェネレーションY(80〜90年代生まれ)世代の写真家を集めた展示でした。実は1年前にも同じ展示会場で展示をしていて、そこのキュレーターの方からお声がかかりました。

今回のグループ展、この会場での今までの企画展の中で来場者が1番多かったらしく、大好評だったみたいです。私の作品を通して、結婚や家族に関する文化の違いに驚く人が目立ちました。椅子に座ると、鏡だと思っていたものがモニターとして機能するからくりは、若い人から年配の方まで興味をひくことができ、そこから作品に集中してもらえたり、私が体験・体感したことを疑似体験してもらえたようです。また、作品を通して家族のあり方について考えてくれた人も多く、オープニングではお客さんとそのことについて会話できました。

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VIVIWARE Cell の活用や感想

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—— VIVIWARE Cell はどのように活用されましたか?

110年前のアンティーク机の引き出しに、お客さんには極力見えないような形で、センサーとタブレットを設置しています。引き出しの取っ手の部分に穴を開けて、そこから人が座ったことをセンサーで読み取り、ディスプレイに情報をおくります。センサーの関係で穴のサイズを極力大きく開けなければならなくなり、アンティークの机を削るのは忍びなかったです。

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ディスプレイの表示の制御プログラムは、VIVITA エンジニアの山森さんに開発を手伝っていただきました。「技術的なことは気にせず何でもやりたいことをやってください!」と言ってくださったり、日本とドイツは8時間の時差があるのに、いつ連絡しても対応してくださり本当に助かりました。山森さんは婚活パーティの司会の経験もあったので、その話も聞けて良かったです。(笑)

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—— お役に立てて良かったです!将来的にはディスプレイ側の表示もVIVIWARE Cellで開発できるようにできればと思いますね。 VIVIWARE Cell を使ってみて、どうでしたか?

実は、展示の設営まで一度もテストすることができなかったのですが、ぶっつけ本番でも簡単に動かすことができました。ただ、展示は数週間続くのですが、2日連続して動かしているとアプリケーションが落ちてしまうことがありました。展示期間の間はアーティストは会場におらず、現地のスタッフや展示員さんに設営やメンテナンスをしていただくのですが、アプリケーションの復帰の仕方などがもっと簡単にできると良いなと思います。あとはセンサーの厚みをもう少し薄くできるといいですね!

—— はい!製品化に向けて安定性や利便性の改善はこれからも続けて行きたいと思います。現場で利用したフィードバックをいただけてありがたいです。最後に、今後の活動の予定などを教えて下さい。

ドイツでは美術大学に所属しているのですが、論文の執筆をおこなっています。それが終わったら5月と7月に展示があり、今回の作品のアップデートをする予定なので、またVIVIWARE Cellを利用した展示をおこないたいです。

また、将来の話ですが、今までは写真家として「印刷した作品をつくる」という考え方をしていましたが、VIVIWARE Cellの色々なセンサーを使えば、やれることが他にもあることに気が付きました。次の「未来編」の作品の構想を練る際には、アイデアの範囲が広がると思います!

—— それは楽しみです。ありがとうございました!ぜひ今後もVIVIWARE Cellを活用していただけるとうれしいです。

まとめ - VIVIWARE Cell for ART

VIVISTOP で日常的に子供たちが使っている VIVIWARE Cell を、写真家の方に活用していただいた事例をご紹介しました。VIVIWARE Cell はアートの世界でも活用できる可能性を感じてもらえたでしょうか?

もし、この記事を読んだアーティスト・デザイナーの方で、展示や作品作りでVIVIWARE Cellを使ってみたいという方がいらっしゃいましたら、お気軽に相談窓口までご連絡ください。

(書き手 VIVITA カタリスト 加々見)

Rie Yamada

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2011年渡独、2013年にベルリン・ヴァイセンゼー美術大学のビジュアルコミニュケーション学科に入学。現在同校の修士課程在籍中。2017年に「Familie werden(家族になる)」でドイツの写真新人賞「gute aussichten - new german photography」を受賞し、9ヶ国で展示された。

website: https://www.rieyamada.com/
instagram: https://www.instagram.com/rie_bergfeld/

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*1:社会学者によって作られた、80年代前半から90年代後半生まれの人たちのことを指す用語”ジェネレーションY”。そのジェネレーションYに生まれた人々を取り巻く様々な環境を、当事者であるジェネレーションY世代の写真家10人が表現した展示会。