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アニメーションをつくるワークショップ「CODE your imagination -コードで紡ぐものがたり-」レポート

こんにちは! VIVITAでVIVISTOP金沢の立ち上げ準備を進めている山森です! 今回は、金沢で実施したアニメーションをつくるワークショップ「CODE your imagination」について紹介します!VIVITABLOGでは、どんなことを考えながらワークショップを企画・実施していったのか、というところに焦点をあてて書いてみたいと思います!

CODE your imaginationってどんなの?

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「CODE your imagination -コードで紡ぐものがたり- 」は、アメリカと日本にスタジオをもつ「トンコハウス」(http://www.tonkohouse.com/jp/)のアニメーターと、子どものクリエイティブラーニングスペース「VIVISTOP」を運営する「VIVITA」のクルーが一緒になって、子どもたちとアニメーションをつくるワークショップです。

「忘れられない夏」をテーマに、ストーリーを考えてキャラクターを動かします。表現の場としては、オンラインの教育プログラミング環境「Scratch」を利用しました。参加者たちは約1ヶ月間、第一線で活躍するプロのアニメーターにアドバイスをうけながら、アニメーション表現とプログラミングに取り組み、最後にその成果を上映会で発表します。

今回は、VIVISTOP金沢の立ち上げに向けて企画したワークショップなので、主に金沢の小学生を対象に、まだVIVISTOPを知らない子どもたちに広く募集をかけました。新型コロナウィルスをとりまく状況もあり、企画を進める我々にとっても手探りしながら作り上げる、初めてだらけのワークショップでした。

このワークショップで初めて知り合う子どもたちと、長期間の活動を継続して進められるだろうか。ほとんどのコミュニケーションがオンラインになるけれど、子どもたちの気持ちを上手く汲み取ってサポートすることはできるだろうか。以前の「VIVISTOP」のような、いつでも来て集まることができる場がない金沢の環境で、子どもたちのクリエイティブな活動のパートナーとなって寄り添うには、どんなことができるだろうか。いろんな試みが詰まったワークショップになりました。

トンコハウス映画祭 第二回

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上記の通り、今回は「トンコハウス」さんと共同でワークショップを企画しています。トンコハウスといえば、デビュー作である『ダム・キーパー』が2015年米国アカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされて、日本でも話題になりましたよね。世界の第一線で活躍しているアニメーションスタジオの方々と一緒にワークショップができるというのは、とても光栄なことです。

しかも、なんと「トンコハウス映画祭」のひとつのコンテンツとして、ワークショップで子どもたちが作成したアニメーションを上映できることになりました。「トンコハウス映画祭 第二回」は、「トンコハウス」が世界の短編アニメーションをキュレーションして上映しながら、さらに海外からもゲストを迎えてアニメーションの講座やトークイベントなどを1週間にわたって配信する、というあのイベントです。世界中の素敵なアニメと肩を並べて、作品上映ができるなんてヤバいですね。良い意味で。

トンコハウス映画祭 第二回

CODE your imagination

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ということで、2020年8月1日に幕が切って落とされた「CODE your imagination」ですが、21名のメンバーが参加してくれることになりました。今回のワークショップでは、最終的にScratch上で制作したアニメーションをトンコハウス映画祭の中で発表することがゴールになります。

まず、夏休みに合わせて8月1日〜8月2日の2日間、金沢の会場でキックオフのワークショップをして、メンバーと顔合わせをするところから始めます。そこから先は参加する各メンバーの自宅が活動場所となって、8月28日の上映会に向けてアニメーション制作を各々に進めます。

その間、クルーたちは週に1回のYouTubeライブ配信とScratchスタジオ上でのコメントで、子どもたちの制作をサポートします。どうしても相談したいことがあれば、個別の相談ができる窓口も設置して、環境によって異なる各メンバーのトラブルにも対応する体制を整えました。

新型コロナウィルス以降、VIVITAでもオンラインのワークショップ運用に取り組んできましたが、20名を超える初対面のメンバーを相手に、リアルタイムのテレビ会議をメインにしないコミュニケーションで約1ヶ月間の制作に臨む、というのは初めての試みです。ほとんど毎日のように子どもたちの制作の様子を確認しながら、サポートについて試行錯誤しました。

キックオフワークショップ

「CODE your imagination」は、キックオフワークショップでメンバーとの最初の顔合わせをするところから始まりました。新型コロナウィルスを取り巻く状況が読めない中で、実施可否の判断はかなり難しいものだったのですが、最大限の感染対策を講じた上で、オンライン参加の選択肢も用意して実施しました。トンコハウスの金沢スタジオがある旧料亭壽屋にて、密を回避するために1回あたり5人程度に参加人数を制限しながら、計4回開催しました。

ワークショップでは、まず会場であるトンコハウスの金沢スタジオを見学して、それから約1ヶ月かけて制作するアニメーションのコンセプトアートとキャラクターを描き、最後に描いたものを発表しました。いきなりコンセプトアートと言われても戸惑うのではないか?と思っていたのですが、参加してくれたメンバーのほとんどが開始とほぼ同時に手を動かし始めて、それぞれに個性豊かなシーンを描き出していたことが印象的でした。また、想像を超えるメンバーたちの集中力にも驚かされました。VIVISTOPの普段の活動では積極的に雑談を試みるのですが、今回のワークショップの中では、メンバーの制作を邪魔しないように機を伺っていると全然話しかけられないくらいでした。

キックオフワークショップについて、先に書いたように新型コロナウィルスの影響で判断が難しい中、オンラインのみでの実施についても検討していました。それでも、最後まで現場での開催の可能性を残していたのには理由があります。それは、これから長く一緒に活動していくメンバーとクルーがお互いの個性を感じとり、ただのスタッフではなく身近なパートナーのような関係性を作りたいという思いがあったからです。

実際に、このキックオフワークショップでは、画面越しのコミュニケーションでは画面外に隠れてしまいそうなメンバー一人ひとりの機微を読み取り、その後の制作期間中のサポートにそれを活かすようにしました。結果として、現場で開催できて本当に良かった、と思えるものになりました。

このときに描いた子どもたちのコンセプトアートとキャラクターは、プロジェクトサイトで見ることができます。記事の最後にURLを掲載しますので、メンバー毎の個性を感じることができるアートをぜひ御覧ください。

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自宅での制作

キックオフワークショップを経て、子どもたちは本格的にアニメーション制作に取り組みはじめます。今回のワークショップの最大の特徴となるのが、自宅で約1ヶ月かけて取り組むこのアニメーション制作です。この間、クルーはScratch上のコメントとYouTubeのライブ配信、そして予約制の個別相談で制作のサポートをおこないます。

基本的にはScratchとYouTubeの2つを主なコミュニケーション手段とするので、子どもたちはクルーに質問してすぐに答えを得ることができず、自分で待ち時間の使い方を考えなければなりません。理想としては、子どもたちが自分で調べて解決するための促しになることを期待していましたが、一方で子どもたちの手が止まってモチベーションがそのまま失われてしまう懸念もありました。予約制の個別相談は、この懸念を補うための手段として用意しました。

こうして、VIVISTOP金沢に向けて手探りしている我々も、どこまで子どもたちの制作に寄り添うことができるのか、ということを学んでいきました。

1週目 - キャラクターを動かしてみよう

最初の週は、まずはScratchに慣れるために自分でデザインしたキャラクターを動かしてみる、という目標を共有して、子どもたちの制作の様子を見守ることにしました。この段階ではまだ、みんなScratchでどんなことが出来るか手探りしているような状態で、ストーリーが見える作品はほとんどありませんでした。作品が動き始めたのは週末直前の金曜日で、それまではYouTube ライブ配信の台本を用意しながら「このまま動きがなかったらどうしよう」とヒヤヒヤしていました。

そんなこんなで、土曜日の朝。YouTube ライブ配信が始まりました。トンコハウスからはアニメーターのトシさんとオカワリさん、VIVITAからは私を含めた4名が参加して、計6名がぎこちなく話すラジオ形式の番組です。ちなみに、当初の予定ではリアルタイムにコメントを受け付けたかったのですが、子ども向けの番組を配信場合はYouTube上でコメントを受け取ることができません。ライブでやる意味がほとんどないことに気がついたのは、後になってからでした。

1週目を振り返り、2週目につなげる番組「CODE your imagination on live #1」はオープニングトークから始まり、1週間のメンバーの作品の進捗を振り返って、トシさんとオカワリさんからはキャラクターを活き活きと描く方法や魅力的なシーン切り替えについて教わり、最後に来週の課題を共有しました。詳細は、下記のURLから御覧いただけます。

2週目 - ストーリーを半分まで作ろう

2週目は、ストーリーの半分まで作る、という目標を参加メンバーたちと共有して、少しずつストーリーが形になっていくのを見守りました。前の週に比べて、各作品がどのように展開していくのか見えるようになっていました。また、個別相談では、これまでの自己解決が困難な場合の窓口に加えて、プロのアニメーターのオカワリさんが答えてくれるスペシャルな相談枠も追加されました。

週末の番組「CODE your imagination on live #2」では、それぞれの作品にストーリー展開が見えてきたこともあり、進捗を振り返るコメントも一層熱がこもるようでした。トシさんからは、作品を魅力的に見せる構図の話に関連して、映像作品では動きの方向によって視聴者に言外の意味が伝えられることを教わりました。また、オカワリさんからは、キャラクターの表情の描き分けについて、プロによる実演とともに解説を聞く、これまたスペシャルな内容をいただくことができました。そして、次週の課題として「ストーリーを最後まで完成させる」という目標を共有しました。詳細は、下記のURLから御覧いただけます。

3週目 - 一度完成させよう

3週目は、「ストーリーを最後まで完成させる」ことを目標に、先週に引き続きストーリー作りを進めました。発表上映会が迫る中、ストーリーの全容が見え始めて結末が気になる作品ばかりになって、進捗を見守るクルーたちの中では完成するかどうかの不安より、面白い作品が観られるという期待の方が大きくなっていたのではないかと思います。この週になると個別相談の内容もより高度になり、また、メンバーからクルーに声優の依頼がされるなど予想外のことも起きて、色々と濃いコミュニケーションが展開されていました。

週末の番組「CODE your imagination on live #3」では、ストーリーがひととおり完成した作品が多かったため、振り返りでは表現の細部に関するコメントが多くなっていました。次が最終週ということで、プロからのアドバイスは色彩や音の使い方など、仕上げに関する内容になっていました。特に色彩については、これまで当たり前に受け止めていた色に対する捉え方が変わるかもしれない内容で、必聴でした。発表上映会まで残り数日ということで、最後には「とにかく仕上げて終わりが分かる演出を入れる」という目標を共有しました。こちらも、下記のURLから御覧いただけます。

最終週 - 終わりが分かる演出をいれよう

最後の週は、発表上映会を目前に控えて、最後の仕上げとして終わりが分かる演出を入れる作業をします。次々と作品に完成の文字が入っていくのを喜びつつ、クルーは発表上映会に向けたタイムテーブルの作成や会場の準備に勤しんでいました。参加してくれたメンバーたちの想像を超えた頑張りによって、どうしても、想定より上映時間が長くなってしまい、嬉しい悲鳴をあげることになりました。

発表上映会当日

ついに迎えた発表上映会の当日。発表上映会の会場は21世紀美術館で、想像以上の本格的なシアターにメンバーが緊張してしまうんじゃないか、と言っていたクルーたちもまた緊張していたと思います。少なくとも、当日はスクリーン投影とオンライン配信用の機材を持ち込んで操作していた私は、とても緊張してました。

トンコハウスによる3回の作品上映が終わり、いよいよ「CODE your imagination」の発表上映会の番になると、参加してくれたメンバーが次々と会場に来てくれました。キックオフワークショップぶりに顔を合わせるメンバーも、直接顔を合わせるのは初めてのメンバーも、なんとなく親しく接してくれているような気がしたのは、緊張しながらも毎週欠かさずYouTube ライブ配信をした成果だったかもしれません。

いざ、上映会が始まると、最初は緊張した様子だった子どもたちも、クルーからの「おもしろかったら笑ったりして、盛り上がりながら観てね」という声に応えて、少しずつ和やかな雰囲気に変わっていったように思います。

上映された作品の詳細については、記事の下部に記載しているプロジェクトサイトから確認していただきたいのですが、トンコハウスのプロのアニメーターの方々から「ストーリーもキャラクターもしっかり考えられていて、こんなにすごいアニメができるなんて驚きしかない」とコメントをもらうような、個性的で魅力的なものに仕上がっていました。

約2時間近い発表上映会を休憩なしで観続けられたことは、ひとつひとつの作品が魅力的だったからこそではないか、と思います。上映会で、事前に打ち合わせすることなくクルーから各メンバーに作品制作について質問を投げかけましたが、それぞれに自信をもって答えているように見えました。

上映会の最後には、トンコハウスからのサプライズとして、オカワリさんによるスペシャルアニメーションも上映されました。ネタバレになるので内容については控えますが、こちらも必見です。気になる方は、ぜひVIVISTOP金沢のYouTubeチャンネルでご覧いただければ、と思います。

今回、この「CODE your imagination」のワークショップで、子どもたちが時間をかけて1つの作品を作り上げ、それが21世紀美術館の本格的なシアターで上映されるまで、一連の様子をクルーとして見届けることができました。細かく反省して次に活かしたいことはたくさんあるのですが、何よりも参加してくれたメンバーたちにとって、この経験がアニメーション制作やそれ以外のことにも活かされるものになってくれたら嬉しいな、ということを思いました。

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終わりに

今回、この初めての試みが積み重なってできた「CODE your imagination」のワークショップを実施し、参加してくれたメンバーや保護者の方からの感想などを受け取って、改めてVIVITAの役割に気付かされたような気がしました。

VIVITAが担う役割のひとつは、子どもたちにとっての「好奇心の伴走者」なのかもしれません。今回、参加するクルーたちもアニメーション作品を作りましたが、それはあらかじめ企画していたわけではなく、子どもたちの制作に寄り添う中で自然にそうなったような気がしています。メンバーたちが直面した課題に一緒に取り組み、トンコハウスのプロのアニメーターの方の様々な言葉を聞いて、クルーもまた作りたい意欲が刺激されました。

誰かを楽しませようと思ったら自分自身も楽しまないといけない、なんて台詞を時々耳にしますが、それと同じですね。子どもたちの好奇心を刺激しようとするとき、私たちVIVITAのクルーは提供者ではなく自分自身もまた好奇心を刺激される一人の参加者であって、自分自身もワクワクするような環境を子どもたちと一緒になってつくっていくことが、きっと理想的な関わり方のひとつなんだ、と思いました。

また、そのような環境づくりに際して、子どもたちの好奇心のその先を走る専門家たちと出会う機会づくりも大事だな、と実感しました。今回のワークショップのように、トンコハウスのプロのアニメーター(トシさん、オカワリさん)といった専門家の方たちと活動することは、VIVITAと子どもたちだけでは到達できない場所からの景色を見せてくれます。まるで何気なく投げかけられる言葉も、子どもにとって後の人生に響く気づきであったり、特別な宝物のような体験になっている、と思います。

VIVISTOP金沢の立ち上げはまだこれからですが、この気づきを活かして子どもたちのより良い伴走者になれるよう、頑張っていきたいと改めて思いました。以上、VIVITAの山森がCODE your imaginationのレポートをお届けしました!

外部参照

VIVISTOP KANAZAWA Instagram
VIVISTOP KANAZAWA YouTube
CODE your imagination プロジェクトサイト
CODE your imagination Scratch Studio