こんにちは!VIVISTOP for Bricoleurのさとうももこです。
主な活動場所は東京都小金井市のナレッジルームで、去年から不要になった服をDIYでリサイクルするプロジェクト「Re:Re:Re:Clothes」に取り組んでいます。VIVISTOP博多でも仲間を増やすためのワークショップを実施したり、アパレル企業や市民農園とコラボする計画を練ったりと、徐々に広がってきたこちらのプロジェクト。詳しい活動はnoteにまとめているので、そちらをご覧いただくとして。
VIVITA blogでは、もう少し、今後の展望とか、私の考えるプロジェクトの意義などを紹介したいと思います。
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紹介したいと思ったのですが。
書いても書いても言葉が溶けていってしまいます。あれこれ書き連ねることはできるけれど、どんな言葉もしっくりこない。
なんで私このプロジェクトやってるんだろう。
なんでVIVINAUTたちは、一緒におもしろがってくれるんだろう。
ひとつだけ確かなことは、誰よりも私自身が、テキスタイルの世界に魅かれているということ。
2021年11月に実施したイベントの際に、偶然羊の原毛をもらったことをきっかけに「Re:Re:Re:Clothes」は始まったわけですが、私のプライベートの過ごし方も変わってしまいました。
去年の6月くらいまでは毎日寝る前に最低30分は何かしらの糸を紡いでいたし、紡績機や繊維の歴史に関する本を図書館から借りてきては読み漁り、石器時代と産業革命に思いをはせ、漁港で魚を選んで調理してもらうように産地で生地を選んでズボンをオーダーできるところがあると聞いて尾州に向かい、羊毛の店が数年前に吉祥寺から山梨に移転したことを惜しみ、最新のジャガード織とe-テキスタイルに関するオンラインレクチャーを受講してテキスタイル研究の最先端に目から鱗を落とし、いつかは原毛を洗って手紡ぎしてベストが編みたいと苦手意識のあった編み物を再開し、高い織り機を買わずとも省スペースで織りを始められる方法について検討し手紡ぎの糸を織り、久しぶりに紡いだら下手になっていてすっかり落ち込んでいる。
繊維の歴史はほぼ人類の歴史と言っても過言ではなく、くるくるとスピンドルをまわして糸を紡ぐ時、少なくとも5000年分くらいのあれこれが胸に迫ってきてもうしんどい。なにかにはまりつつある初期段階の、あまりにも広大な世界の片隅につま先をひっかけてしまったことに気づいたときのこの茫然とした気持ち。
好きなことを突き詰めるなんてちっとも楽しくない。ただ目の前に次々と知るべきこととやるべきことが現れるからやるだけなのだ。
はあーーーーー。それもまた人生だ!
というわけで、プライベートで調べ物したり本を読んだりして見つけた「私的・そんなの着ちゃうの?!びっくり繊維の服 3」を紹介したいと思います。
【1】紙
昔の服部門1位はやっぱり「紙」。
日本で木綿が普及したのは江戸時代頃。それ以前の庶民は苧麻を主としつつあらゆる繊維を身につけていたようです。『苧麻・絹・木綿の社会史』の中にこんな一節がありました。
一五七四年(天正二)の武蔵鉢形城主北条氏邦の「一騎合衆」に対する「永代法度」には、
朝夕も又正月も一騎合衆は白衣にてもくるしからず候、冬はかみこ・木綿こそて然るべし、夏は布かたひら又ハたふかたひらもくるしからす候
とある。これは戦場の衣服についてではなく「陣番・普請役」勤務の際の規定であるが、冬は木綿とともにかみこ=紙衣が一般的であったのである。紙衣は保温の点では優れているといわれるが、それにくらべれば木綿の性能は格段に優れていたであろう。
——永原慶二『苧麻・絹・木綿の社会史』(吉川弘文館、2004、P325)
紙が冬の一般的な衣類なのかあ……。それはごわごわした苧麻の布に比べれば温かいかもしれないけれど、なんとも寒そうです。現代人でよかった。本当によかったよ!
【2】ヘチマ
SNSで見かけた部門1位は「ヘチマ」!
東京農工大学科学博物館は、ヘチマタワシをそのまま着ることを本気で考えた #ナゾすぎる 服を持っています。#キュレーターバトル#旧繊維博物館の収集#不織布研究#ヘチマ着たい pic.twitter.com/MwXWaG0iF2
— 東京農工大学科学博物館 (@tuat_kahaku) 2022年5月25日
いやいや、ナゾすぎるでしょう。一体全体、なぜヘチマたわしを着なければならないのか(笑)。
でもこのヘチマベストが教えてくれることは、木綿やポリエステルだけをこの先も着続ける必要はないということ。織ったり編んだりしたものだけが布ではないということ。はるか昔から、人類は使えるものはなんでも使ってきたわけです。服の未来を考えるときにはぜひこのヘチマベストの写真を見ながら、当たり前だと思っていることの外へ逃走していきたいものです。
【3】ポリエチレン
化学繊維部門1位は「ポリエチレン」!
寒い時は着込めばいいけれど、暑い時に脱ぐのは限度がある。かといって、なにも着ないのはさすがに問題がありそう。それじゃ、温暖化の進む地球でどうしたらいいの?と考えたことはありませんか。MITの研究者がたどり着いた素材はポリエチレンだそうです。
「衣服は体熱を吸い込んで温まり、そして身体の周りに熱をとじこめるのです」と、彼女は説明する。暑い日には、衣服は熱の層の温度をさらに上げる。
だが、衣服がそうしなかたらどうか。衣服が赤外線放熱を通過させる素材で作られていたらどうだろう。見た目には色付きでも熱は素通りできる、そういう生地でできていたら。
(中略)
「世界で最も重要なプラスチック」と謳われ、プラスチック製造の三〇パーセントを占める素材であるそれは、ポリエチレンであった。
——ヴァージニア・ポストレル、ワゴナー理恵子 訳『織物の文明史』(青土社、2022、P362)
えっレジ袋を着るってこと?!
もちろん繊維状にしてから織るわけだからレジ袋かぶるのとはわけがちがうだろうと頭では分かっているものの、突然の雨にビニール袋をひっかぶってVIVISTOPから帰っていく小学生の姿が思い起こされます。うーん、どんな着心地なのか気になります!
やればやるほど、調べれば調べるほど、テキスタイルの世界がおもしろい。
歴史も社会も経済も工業も農業も科学も、あらゆることが身近な「服」という存在で交差していてどきどきする。
だから私は、VIVINAUTと一緒に「明日(未来に)、なに着る?」を考えていきたいわけですね。
さあ、あなたは明日なにを着ますか?それはどんな未来につながる服ですか?おもしろい未来を、一緒に作っていこうじゃないですか!
(了)
以下は、私の紡いだ糸コレクション。