はじめに
VIVIWARE株式会社の嶋田です。
最近何かとお世話になっている聖学院中学校で、あたらしい試みとしてVIVIWARE Cellを利用した「からくり装置づくり」の授業が実施され、その技術サポートとして参加してきました。
以前の聖学院との取り組みはこちら blog.vivita.io
ことのきっかけは聖学院で理科の担当をされている先生から、以下のメッセージをいただいたことがはじまりでした。
中2理科の授業概要を考えています。VIVIWAREを活用してからくり装置を作ろうかと。すでにありそうなテーマですが、前例などありますか??
からくり装置の制作活動を通して「電気を使って便利になるとは?」を生徒たちと考え、「電気を使う人(User)」ではなく「電気を扱う人(Engineer)」としての視点を得たいです。
また「からくり装置の中にある面白さの本質は何か?」も考えたいと思っています。
ちょうど昨年12月に世界中のVIVISTOPが参加する「World Travel Machine」という企画を実施した直後だったこともあり、からくり装置のノウハウを持っていたことと、このように遊びの要素が強い活動を授業で実施するとどうなるのか?という興味もあり授業づくりに協力することになりました。
(ちなみに、このメッセージをいただいたのが12月末で、この授業の導入のための初回が1月の中旬ということで「そんなスピード感ある先生が世の中にいるんだな」と非常に驚きました。)
授業について
この中学2年生の理科の授業の一部として実施しました。大枠の概要としては、からくり装置づくりを通して日々の生活における「電気を使う(User)」と視点から「電気を扱う(Engineer)」という視点へと転換し、電気を扱うとはどういうことか?という問いを授業後にそれぞれ考えるというものです。
授業の流れは以下です。
- テクニカルローンチ1回目
- テクニカルローンチ2回目
- 製作1回目
- 製作2回目
- 製作3回目
- 振り返り
今回、5クラス総勢150人規模の生徒に対しての実施となること、製作の時間が3回しかとれないなどの条件があり、先生と相談しいくつか工夫を盛り込みました。
ホワイトボードを使う
これはVIVITA・VIVIWARE社の過去の事例から得た知見ですが、からくり装置づくりをテーブルから始めるととても時間がかかります。それは重力を使う性質上、3次元に広がる立体の装置(構造物)を作る必要があるからです。
そこでホワイトボードを利用し、高さ方向の構造を作りやすくします。2次元構造になるため装置の広がりによる面白さは減ってしまいますが、その分時間を短縮することができます。
(過去のVIVITAのイベントで実施したもの)
いくつかの基本ユニットを用意する
ホワイトボードを使うだけだと、まだ難しい部分があります。例えば、レールをどうやって固定するか?VIVIWARE Cellやそれに付随するモーター類をどう固定するか?という問題です。これらを解決するために、いくつかの最低限となる基本ユニットを用意しました。最低限としたのは、このユニットに何かを付け足すことで各々の工夫の余地を残すためです。
基本ユニット自体は、MDFをレーザーカットし組み合わせ、その裏にマグネットを貼り合わせたというシンプルなものです(一部3Dプリンタを使用)。
製作時間の調整
前述のとおり5クラスを並行実施してしまうと、製作物の管理が大変になりますし、モーター等の比較的高価な材料類も使いまわすことができず数が必要になってしまいます。
そこで先生が授業時間を調整し、クラスごとに集中的に製作の授業を実施することになりました。具体的には、最初のクラスの製作が終わると、次のクラスの製作が始まり、次のクラスの製作が終わると、さらにその次のクラスの製作が始まる、というように、製作部分だけは並行ではなく数珠繋ぎで実施していただきました。
授業の様子
VIVIWARE社が参加したテクニカルローンチと製作に絞ってご紹介します。
テクニカルローンチ(2回)
VIVIWARE Cell自体を使うことが初めての生徒がほとんどということで、まずはVIVIWARE Cellとはどういうものかの説明と、使い方のレクチャーからはじめます。
また、この装置づくりにおいてVIVIWARE Cellを使うことは必須ではありません(皆さんもよく知っているNHKの某番組では電気は使っていません)。ということで、今回のテーマでもあるVIVIWARE Cell(電気)を利用すると、利用しないときと比べて何ができるようになるのか?どういう面白さを演出できるのか?ということも頭の片隅に入れながら触ってもらいました。
製作(3回)
製作は4人1チームのグループワークです。前に書いた基本ユニットや、それらと組み合わせる簡単な材料(工作用紙、紙コップ、ストロー、ヒモなど)も用意してあります。
先生が用意したワークシートを活用しながら制作を進めます。
(基本ユニット類)
(各チーム1枚ずつホワイトボードを用意)
(理科という範囲にとどまらず簡単な工作も必要)
(何度も球を転がしながら調整を繰り返す)
完成
いくつか完成品を紹介します。いずれも素晴らしい作品で、私が想像していたレベルを超えるものばかりです。
また、本来授業をスムーズに進めるためにクラスごとに集中して製作を実施しましたが、「前のクラスの作品を参考にしてより面白い作品に仕上げる」という文化ができていた点も面白く感じました。
以下の動画も概ね時系列にならんでおり、最後のものではホワイトボードの書き込みも充実し作品のストーリーをより感じさせるものとなっています。
さいごに
今回私の中で一番良かったなと思う点は、この授業の参加者の中に自主的に放課後に残って作業を進めたりする子がでてきてくれたことです。自分の中学校時代のことを思い出しても、そんな授業を受けた記憶はありません。もちろん全員が全員という訳ではありませんが、少なくとも一部の生徒たちはこの授業を存分に楽しみ主体的に活動してくれていることを大変うれしく感じました。
授業をサポートする側としても新しい知見が得られましたので、この反省を生かして次につなげたいと思います。
最後に、今回の授業にお声がけくださった佐藤先生、また授業においてVIVIWAREについて理解できるように努めていただいた先生方、大変ありがとうございました。