教育事業を分類するにあたってエクストリームと称されるVIVITAとは、いったいどのような会社なのか。 VIVITAで働くエンジニアの一人から話を聞くことに成功した。
VIVITAで働くエンジニア
撮影協力 VIVISTOP柏の葉 メンバー 隼介
――まずは、あなたについて教えて下さい。
山森文生(やまもり ふみお)と言います。
VIVITAではソフトウェアエンジニアをしています。
――普段はどのような仕事をしていますか?
主な仕事は、子どもたちの自由な活動が促される環境づくりの検討です。
実際に子どもたちが集まる場としてのVIVISTOP柏の葉には、カリキュラムのようなものがありません。 だから、子どもたちはどのような活動をするのか自分で考えて決めます。
子どもたちの選択肢を広げるために、大人は色々と試行錯誤をするのですが、会話の中で瞬間の関心を拾い上げるような働きかけから、機材の導入や専門家への問い合わせなど、そのアプローチは様々です。 特に中長期で考えなければならないようなアプローチについては、導入に対して効果が実感されるまでに時間がかかるものも多くあります。
多様な取り組みが同時に並行する中、数値的な指標が無い現場で個別の効果を測定することは簡単ではありません。
何をどのように記録するのか。
誰がいつ振り返るのか。
そもそも、何に活用するのか。
毎月のように仮説は変わり続けている。
そんな不確かな場所で、現場のクルーたちとまずは継続可能な記録方法について探り、その実装と試験を繰り返しています。
――他にはどんな仕事をしているのでしょうか?
VIVITAでは、興味のあることに対して自由に取り組むことができます。 すでにあるプロジェクトに参加したり、新しくプロジェクトを立ち上げたりです。
例をあげると、私の場合は子どもたちが物語をつくって共有するためのプラットフォーム開発に参加してますね。 これは、外部の会社と共同で進めるプロジェクトになっていて、今は関係者の前でプロトタイプを使ったデモプレゼンが終わったところです。
他には、イベントや通常活動時に写真の撮影もしています。
これは活動記録の検討を兼ねた取り組みですが、同時にその子の将来の資産として積み上げるものでもある、と思っています。
例えば、身近な使われ方として初対面の人に自己紹介をするときとか、かっこいい写真があると便利じゃないですか。
それに、様々な背景を持った人たちと一緒にプロジェクトを動かしていくときって、職能に限らない自分の過去を語りたい場面があるんですよね。 その人のこれまでの制作物なんかを見れば、何ができるかくらいは分かります。 でも、その人の根底にある考え方までは、必ずしも想像できるものではありません。 そういうときに、原体験として「子どもの頃にしていた○○がすごく楽しくて」みたいな会話をしておくと、その後のコミュニケーションが円滑になったりするんです。
だから、誰かに対して自慢気に見せられるような写真を子どもたちには残してあげたいです。
――さきほどから気になっていたのですが、首から下げてる「ふーみん」ってなんですか?
ニックネームです。
「ふみお」だから「ふーみん」です。
首から下げられた名札には「ふーみん」の文字
変化する環境としてのVIVISTOP柏の葉
――VIVISTOP柏の葉について教えて下さい。
詳しいことはWebページを見ていただくとして。
エンジニアの視点で見て「特徴的だなあ」と思うのは以下の点ですね。
- 利用者との距離が近いこと
- 利用者の関心の移り変わりが激しいこと
- 利用者と開発者の一体感があること
とにかく、スピード感が求められる場所であるような気がします。 人間も環境もどんどん変わっていくので、開発に時間をかけてしまうと、動作するころには意味がなくなっていたり。 そういうことが、よくあります。
――なるほど、変化が場所のキーワードなんですね。
山森さんはVIVISTOP柏の葉のオープンから関わっているそうですが、当時から大きく変わったことはなんですか?
一番に感じるのは、賑やかになったかな、ということですね。 それは、子どもたちの人数が増えたというのもありますが、それぞれの子どもたちの過ごし方の変化が雰囲気を変えているのかな、と思います。
去年の3月に比べると、子どもたちは色々なことを話すようになりました。 子どもから大人に話かけてくることも増えましたし、子ども同士で話している様子もよく見かけます。
あとは、子どもたちが作るモノの質にも変化があるように思います。 雑なものが減ったということではなく、大人から見ても丁寧に仕上がって見えるモノが増えてきたかな、という印象です。 レーザーカッターとVIVIDESIGNER(内製の製図ツール)の導入が大きく影響しているのではないでしょうか。
他にも、モノを作るだけじゃなく、コトを作るような動きも増えてきた気がします。 今では子どもたち自身でイベントを企画して実行する、みたいなことが普通のことになっています。 子どもたちの活動が、個人に個別のものから複数人で関係するものに変化している、という点は興味深いです。
――逆に変わらなかったことはありますか?
ちょっと大人側の目線になってしまいますが。 大人の期待を押し付けず子どもの自発的な活動を応援する、という考え方は変わっていないように思います。 あとは、大人の都合で子どもたちにルールを押し付けないけれど、安全管理は徹底して見直しを続けているところも変わっていません。
とんちみたいになりますが、自分たちが変化をつづけようとする姿勢が変わってないのかもしれません。
――VIVISTOP柏の葉は、どうなっていくと思いますか?
正直、わからないですね。
一番最初の何もなかったときから、今の状態を想像できなかったように、今後も予想外の変化を続けていくような気がしています。 でも、目まぐるしく変わる子どもたちに一番の体験をプレゼントするために何ができるのか、考え続ける大人たちがそこにいることは確かなんじゃないでしょうか。
オープン前の何も無かったVIVISTOP柏の葉
見学に来た子どもたちに内製ツールを披露するエンジニア
初期のPC解体ワークショップ
ダンボール工作するメンバーとクルー
ダンボールを使った作業台の組み立てを行うメンバーとクルー
クルーと共同製作した飛行船を初めて飛ばす様子
クルーの卒業に際して子どもたちが主催したお別れ会の様子
最後に
――VIVITAで活動する上で最も大切なことはなんでしょう?
個人的にこう思っている、というだけの話ですが。
このような場で大人たちがするべきことは何かというと、「こういうのあるんだ!」「そんなこともできるんだ!」「なんかすごい!」「自分もすごくなれそう!」というような刺激をつくりだすことだと思います。 子どもたちが知らなかった新しい世界を見せて、今までになかった関心に火をつけるとか。 子どもたちがゴールだと思っていたことについて、それをさらに深掘りした先にある面白さを見せつけるとか。 そういうのです。
大人だから意図を持って子どもに接したりします。
でも、子どもから思いもよらないことを教わることが多いです。
気が付いたら、大人も子どもも対等に教わり合う関係になっているはずです。
だから、子どもと一緒になって、なんにでも興味を持って、とりあえずやってみることが大事じゃないでしょうか。 もし、必要なスキルが自分の能力の範疇を超えていたとしても、子どもと一緒に学んだり専門家に助けてもらったり、そういうことができる場所だと思うので、とにかく面白そうならやってみるしかないです。
これ、なんだか、すごく良いことを言ってるっぽくないですか?
撮影協力 VIVISTOP柏の葉 メンバー 隼介