こんにちは、VIVITAのソフトウェアエンジニアのかっしー(@kassy_vvt)です。 本記事では弊社で開発中のコマ撮りアニメ製作ツール「VIVISTOPMOTION」の紹介をさせていただきます。
VIVISTOP柏の葉オープン直後の2017年3月、弊社デザイナーの西沢さんがVIVISTOPの一画で楽しげな活動を開始されました。
それはコマ撮りアニメーション(ストップモーション)の製作です。 カメラで小さなスタジオ内を静止画撮影し、スタジオ内の物体を少しずつ動かしてまた静止画撮影、撮影した写真を低めのフレームレートでつなぎ合わせ、パラパラ漫画のようなアニメーションを作るあれです。
当初使われていた機材は西沢さんのiPhoneとMac Book。活動自体はとても楽しいものの、アプリの使い勝手が良くなく、ストレスと向き合いながらの活動でした。
そんな西沢さんと子どもの様子をみて、 「自分ならもっと手軽にストップモーション製作を楽しめるシステムを作れる」 そう思ったらついカッとなって、開発してました。それが今回ご紹介するアプリ「VIVISTOPMOTION」です。
システムの基本構成は柏の葉で配備されているAndroidタブレットと、たまたま手元にあったオリンパス社製オープンプラットフォームカメラ「Olympus Air」の組み合わせです。なぜかこれがたまたま手元にありました。今思えば運命です。このシステムを組む上で、WiFiによる操作やデータ転送に対応し、なおかつ液晶など余分な要素の一切ない小型軽量なAirはまさにベストマッチでした。本当に運命です。
アプリの特徴としてはアプリ内にズームやピント、露出補正を含む一眼カメラ遠隔操作全般を行えるコンソールを用意したこと、シャッターを押す度に各コマフレームを順次転送することで、随時プレビューで動きを確認したり前コマとの差分を確認できること、撮影完了後にコマをつなぎ合わせて動画ファイルをアプリ内で生成できること等です。アニメ製作者が可能な限り機器操作に煩わされずスタジオ内の世界操作に集中できるよう心がけました。技術の詳細は後続の記事で説明させていただけたらと思います。
Airの開発元のオリンパス社が本カメラのAPIとライブラリを公開してくださっているため、開発は非常にスピーディーに行えました。開発版の基本形ができてきたところでデザイナーである西沢さんに見てもらい、ちゃんとしたUIデザインを起こしてもらいました。例によってデザイナーに整備される前のアプリUIは非常にプアなものです...
できた機能から順に柏の葉内で子ども達に試用してもらいました。子どもたちはあっという間に操作に習熟し、たくさんのアニメーションを製作してくれました。 例によって多量のバグ出し(滝汗)や機能要望もガシガシいただけました。
それだけでなく、VIVISTOP内のマテリアルや工具を使って次々にアニメーションスタジオが拡張されていき、日々アニメーション作成環境が進化していきました。
子どもたちが作るアニメーションは子どもたちが持参したお気に入りの玩具やVIVISTOP内で作成したオリジナルキャラクターを主役に立てたものが多く、思わず魅入ってしまうストーリー性のあるものや、表現の技法に感嘆が収まらないレベルの作品が生まれていきます。撮影枚数1500枚にも及ぶ超大作なども生まれました。僕は当初アプリの仕様を考えるときに「撮影枚数の上限はせいぜい300枚でいっかー」などと考えていたため、これは慌てて仕様変更をせざるを得なくなった超級スケールです。
また、沖縄県うるま市で開催されたVIVITA出張ワークショップでは本アプリが屋外で活用され、スタジオ撮影とはまた一味違ったアニメーションが多数製作されました。
エストニアのスタートアップイベント「Latitude59」でも本アプリを披露し、現地の子どもたちに使ってもらいました。幸い評判はとても良く、現地の子たちは日本の子たちとは違うキャラクターでテイストの違う物語を紡いでくれ、とても見ごたえがあり楽しませていただきました。
なお、僕も自分でアニメーションを作ってみましたが、ただ人形が画面内を「滑る」だけの特に面白味もないアニメしか出来ませんでした… 子どもたちの作品のように「歩く」ように見せるのにさえ相当な技量と熱量が要るようです… 残念ながら僕自身にはアニメクリエイターとしての才能は無さそうです...
それでも子どもクリエイターや西沢さんと一緒にアニメについて語るのはとても楽しく、アニメの表現の幅を広げるためにはどんな機能があればよいか等よく一緒に議論します。現在は手書きイラストを乗せる機能や背景を差し替える機能、タイムラプス撮影機能などを開発しています。またカメラ側にも機構を追加したいとの要望があり、三脚座のステップ移動やステップ首振り機能などの開発も進められています。VIVIDESIGNERに比べて機能リクエスト一つ一つの開発量が重く、処理しきれなくなっているのが悩みです。僕が子どもの足枷にならないように、今後も精進して開発継続していく所存です。