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神戸 都心こどもまちづくり会議レポート #後編 —— 「歩いて楽しい三宮のまち」が完成するまで

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こんにちは!!!VIVITAでインターンをしている”ヨッシー”こと吉村佳津司です。 前回に引き続き、2020年2月15日〜16日に開催した「都心こどもまちづくり会議」のレポートをお送りします。

前編はこちら

【都心こどもまちづくり会議 powered by VIVITA】
~30年後の未来の三宮の街をこどもたちの視点で考える2日間~
神戸市は、2019年度7月から神戸市こどもの創造的学びに関する研究会を立ち上げ、次世代を担う創造的人材の育成に、分野・領域の枠を超えて長期的な視野で取り組んでいます。このたび、神戸市と同研究会が主催する実験プログラムとして、VIVITA協力のもと「都心こどもまちづくり会議」を開催しました。


会場:デザイン・クリエイティブセンター神戸 KIITO http://kiito.jp/
日時:2020年2月15日(土)〜 2月16日(日)
参加:小学生3年生〜6年生
主催:神戸市・神戸市こどもの創造的学びに関する研究会
協力:VIVITA株式会社

DAY2ーいざ、三宮のまち模型づくり

2日目はいよいよ、「まち模型」製作に取り掛かります!さまざまな廃材を使い、みんなで考えた未来の「歩いて楽しい三宮のまち」をかたちにしていきます。

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レーザーカッターで切り出したMDFを組み立てたり、廃材を利用して自由に創作していく子どももいれば、ベースの白模型を活かしつつ、リニューアルするかたちで自分が計画している建物を作り上げる子どもたちも。それぞれ自由に材料を使い、模型をつくっていきます。

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45分ごとに「まち模型」に集まり、完成した模型を配置して、みんなで確認します。 実際に製作しながら変更していくことも多く、例えばLSTと高架線など隣り合うアイデア同士で認識の食い違いがあった場合には、乗り換え駅の設置について相談する様子が見られました。

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完成した模型にはそれぞれ名前を付けてもらい、レーザーカッターで看板を作成しました。「デカトイレ」や「三宮江戸温泉」「お花公園」など、ユニークな名前の看板がどんどん設置されていきます。

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さあ大詰めです!

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「歩いて楽しい三宮のまち」アイデア発表!

こうして、子どもたちが1日かけてつくった「まち模型」は完成し、最終発表へと移ります。

子どもたちが自分の考えた問題意識と計画、その機能について提案した後、神戸市が考えている三宮やフラワーロードの計画を対案として提案し、子ども達の考えている計画についてフィードバックをもらいました。

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子どもたちが、まち歩きを通して感じた問題意識や課題、それを解決するためのまちづくりの計画とその機能について、神戸市の皆さんに提案をおこないます。大人からは、子どもたちのアイデアに対するフィードバックをおこなうとともに、対案として神戸市が考えているまちづくりの計画を提案します。

それぞれの計画は意外にも似ていたり、まったく異なっていたり。しかし、いずれにしても根幹にある問題意識は共通している印象を受けました。

それでは、それぞれのチームのアイデアをご紹介します!

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Aチーム(駅前空間)——「三宮らしさ」から人の動きが広がる駅前に

駅前空間を担当したAチームは、全員でまち歩きの感想(問題意識やその解決策)を共有し、その後「三宮らしさとは?」や「駅前に何があればいいか」を話し合いました。

フラワーロード計画
まち歩きしてみたらフラワーロードに花が少ないことに気付いたことから、花をもっと増やす計画が立てられました。

LRT(次世代型路面電車システム)計画
駅から港まで人がどう移動するかを考える中で、LRTを走らせるというアイデアが生まれました。乗り物オタクの学生スタッフとタッグを組んで、電車のカラーリングを決めて芝生の線路を引き、駅舎のデザインにもこだわりました。

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商店街ゴーカート計画
もっと子どもが楽しめる場所にした方が良いという意見から、商店街の中をゴーカートが走り回るアイデアが生まれました。

パチンコ屋を室内遊園地に
商店街は大人だけが楽しめるパチンコ屋だらけだから、もっと子どもに場所を譲るべきだという主張をもとに、パチンコ屋を取り壊した跡地に室内遊園地を計画。写真では見えにくいですが、建物の一階部分を新たにつくり、そこに遊具が置いてあります。

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変な像公園・屋上プール計画
三宮に何があれば、人がもっと来たいと思うかな?という問いから、阪急百貨店の屋上にプールができました。また、駅前ロータリーは偶然「変な像」が設置されて公園になりました。

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ハンモックパークレット
まち歩きで出会ったパークレット(車道の一部を転用して人のための空間を生み出す取り組み)にも何かがあればいいのに、という気付きからハンモックが設置されました。

高架キッザニア計画
鉄道の高架下が暗くてあまり近寄りたくないという意見が出たので、解決方法を話し合いました。天井に空を描くアイデアも出ましたが、そもそも線路を地下化すればいいのでは?という結論になりました。そしてその跡地にはキッザニアを建てることで、子どもの集客につなげよう!という計画になりました。

ロープウェイ計画
駅から人がどうやって移動するのか、どんなコンテンツがあれば人が集まるのかを考えるなかで、ロープウェイをつくることになりました。地下化した駅から、三宮のランドマークと他の子どもたちが新しくつくった施設を結ぶルートで運行されます。

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Bチーム(フラワーロード)——人にやさしく、あたらしい暮らし

駅から港までを結ぶフラワーロードを担当したBチームは、まち歩きで気付いたことを共有し、「歩いて楽しい道路にするには?」というテーマでアイデアを考えました。

車いすロード・音の鳴るロード
「人にやさしい道路」+「エンターテイメント」をテーマに、新しいフラワーロードづくりに取り組みました。踏むと音が鳴る歩道を作り、目が見えない人や車椅子の人が楽しめる道になりました。

ゆっこの結婚式場・ゆっこの結婚式場ホテル
フラワーロードの歩道で結婚式ができるようにフラワーアーチを作り、公園にはパーティー会場が出来ました。駅から続く「音がなる歩道」が、会場までナビゲートします。ホテルやマンションも完成しました。

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フラワー病院・ラッキー薬局
「あたらしい暮らし」をテーマに、病院と学校が繋がっている施設を作りました。病気をしている人でも、学べる環境を作りたいとのこと。

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さくちゃん市役所・神海鉄道・市役所前駅
「あたらしい交通」をテーマに、フラワーロードの上に高架の鉄道を作りました。なんと市役所の庁舎の中を線路が突き抜けており、庁舎に「市役所前駅」があります。

駅前チームにも港チームにも鉄道関係に取り組む子がいたので、みんなで集まって協議しました。自分が作りたいものを自由に作ることも大切だけど、全体の調和のなかで創造性を発揮することも貴重な経験です。

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三宮江戸温泉・生田川の復活
観光スポットをつくって、いろんな国の人と交流したいというビジョンをかたちにすべく、江戸時代のお城のような温泉施設「三宮江戸温泉」をつくりました。そこは日本の文化や伝統に触れることができ、いろんな国の人との交流を可能にします。そして、かつてフラワーロードにあった生田川を復活させ、屋形船で温泉施設に行くことができるよう計画しました。

三宮エコタワー・三宮宇宙船ターミナル
太陽光の発電所「三宮エコタワー」は自然エネルギーを生み出し、温泉施設はもちろん、三宮の主要な施設に電力を供給します。さらに「三宮宇宙船ターミナル」が完成し、ファルコンが三宮フラワーロードに降臨しました。

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Cチーム(ベイエリア)—— 人が集まる、楽しい港にしよう!

ベイエリアを担当したCチームは、「港エリアの課題は何なのか」ということを議題に意見を出し合い、「歩道橋を含めた高速道路の空間をどうしていくか」「港を楽しく人が集まるところにするためにはどうするか」と2つのテーマでアイデアを考えました。

港のいろんな施設(フィッシュキャッチャー) 「魚をとるクレーンゲーム施設」は、海の魚がたくさん獲れる仕組みにゲームの要素が加わることで、漁師さん以外の人も楽しめるようになっています。それによって港に人が集まるのではないか?というアイデアです。いろんな人が長く楽しめるように2つの塔でできており、それぞれ初心者用とプロ用のクレーンゲームになっています。

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港の楽しいお店たち・港を楽しくするいろんなお店
みんなから出たアイデアをまとめて「駄菓子屋さん」「レストラン」「釣り具屋さん」の3つを形にすることに。

駄菓子屋さんは、自分が好きなガチャガチャのかたちを目指していましたが、途中で「太陽の塔」のようになってきたので「太陽の塔型の巨大ガチャガチャ駄菓子屋」になりました。

港は倉庫のように味気ない建物ばかりなので、「巨大な魚が釣り竿でつられているモニュメントがついたお店」「古い使われなくなった船を陸にあげて船のレストラン」など、特徴的なデザインの建物を意識してつくっていたようです。

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デカトイレ
神戸市中の公衆トイレの管理センターが入っている巨大なランドマークトイレを作り、港に人を集めたいときは神戸市中の公衆トイレを閉めてしまえば、トイレを使いたい人が港に集まるという、実にユニークなアイデアです。

他の子どもたちの「マジックミラーで外からは中が見えないが、中からは外が見えて開放感がある」「自動で優しい灯りがついて、暗くならない安心なトイレ」などのアイデアを取り入れて、素敵なトイレが完成しました。

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みどりの港一周さんぽ
「歩道橋」を港の方まで伸ばして「海中トンネル」につなげるアイデアです。海中トンネルの先にみんなが楽しめる「大きなステージのある浮島」や、浮島から更に出かけられる「海上を走れる車」ができ、「港エリアを回遊できる緑の歩道」はどんどん面白くなっていきました。

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安全な道(ポカポカ足湯) 「高速道路の下の道」をどうするか。最初はみんなから出ていた「車が多くて危ないから信号にあわせて道路に柵が出てきて、ちゃんと車を止めてくれる装置」や「大きな荷物も運びやすい幅の広い歩道」などをどうつくっていくか考えてましたが、最終的に、高速道路下にある道路を途中からトンネルで地下化してしまい、その空間は自由に動ける公園空間になりました。

ごちゃごちゃした柵がたくさんあって空間がわかりづらかった高層道路の下がすっきりし、みんなから出た「ポカポカ足湯」のアイデアが適用されました。

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ゆめ公園(東遊園地)
港へ行きたくなるような玄関口をイメージして、カラフルな遊具が並ぶ公園をつくり、暗くなりがちな高速道路の下を色のある空間に変えました。

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最後は、神戸芸術工科大学 曽和研究室の皆さんが撮影してくださった、1日の振り返りビデオをみんなで観て、まち模型の前で集合写真を撮っておわかれです!!
子どもにとっても、大人にとっても、実に濃密な2日間となりました。

2日目の活動の様子は、こちらのショートムービーでご覧いただくことができます。

こどもまちづくり会議を終えて

神戸市役所 辻 慎祐さん

神戸市では、子どもたちの創造力を地域社会全体で育む環境づくりを推進しています。取り組みとして、子どもの創造力育成に関わる有識者や学校関係者、企業等の様々な立場の方が参画する「神戸市こどもの創造的学びに関する研究会」を立ち上げたり、研究会で議論した内容をもとに、子どもたちが参加できる様々な実験的なプログラムを実施してきました。

今回の都心・三宮再整備をテーマとした「都心こどもまちづくり会議」も研究会が主催する実験的なプログラムの一つとして、子どもたちが十分に創造力を発揮できるよう、自由な雰囲気や子どもたちの主体性が最大限尊重される環境を大切にして、VIVITA側と企画を詰めていきました。

2日間に渡るプログラムでしたが、よっしーをはじめとしたVIVITAスタッフ、またボランティアで参加してくれた建築やデザインを学ぶ地元神戸の大学生たちの素晴らしいサポートもあり、最初は緊張していた子どもたちも、まち歩きで感じた課題から自分なりの意見を堂々と発表したり、まわりとコミュニケーションを取りながら計画の調整を図る姿が見られました。チームで試行錯誤をしながら計画を練り上げ、最終的には夢に溢れる都心・三宮の街をつくりあげてくれました。

子どもたちが制作してくれた街の模型は、今回のプログラムの会場であったデザイン・クリエイティブセンター神戸での展示を予定しておりましたが、新型コロナウィルスの影響もあり、残念ながらまだ展示できておりません。コロナの影響が落ち着いた段階で、子どもたちの取り組みの成果として広く展示を行っていきたいと考えています。今回のプログラムをきっかけに、子どもたちが自分の住む街に関心を持ち、将来的には神戸のまちの担い手として、まちづくりに参画してくれることにも繋がればと考えています。

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ヨッシーの振り返り

これまで、VIVITAが大切している「自分で考えてかたちにすること」「かたちにする方法は一つではなく、考え方次第で色んなアプローチ手法があること」「かたちにできた成果は、それぞれの個性がちゃんと発揮されること」を軸に、スタッフも子どもも双方が楽しんで活動出来ることを目標に、ワークショップを企画してきました。

今回はそれに加えて、「周囲との合意形成」や「自分の意見をしっかり他人に伝えること」など、自分が考えたことをかたちにするだけではなく、そのプロセスや伝え方について、子どもたちがしっかり考えている様子が伺えたことが有意義でした。

本格的な人口減少社会を迎える中で、行政や計画者主体の開発は限界を迎えており、開発者・住み手双方が分け隔てなく、まちの未来を考え、開発を行う必要性があると考えています。「ここはもっとこうした方が、まちが良くなるのでは??」「じゃあちょっとつくって置いてみようか??」と、住民側と開発側が一つの仮想上のまち模型で討論しあう風景が当たり前になる未来を目指し、今後も活動を続けていきます。

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