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VIVITA ROBOCONへの道 #4:高知/佐川編

こんにちは、VIVITAコミュニケーターのさかいです。 2019年9月から10月にかけて開催された「VIVITA ROBOCON 2019」の振り返りを全6回(不定期更新)に渡ってお届けするシリーズ、第五弾は高知県佐川町におけるVIVITA ROBOCONへの道のりをご紹介します。

VIVITA ROBOCONを牽引した小金丸&小林コンビが、さかわ発明ラボの山千代 航さん、浅野 航さん、杉本 和さんにお話を伺いました。

【活動拠点データ】

■活動拠点:さかわ発明ラボ
高知県の中西部、佐川町にあるものづくり施設(Fabスペース)。レーザーカッターを中心にデジタル工作機器の貸し出しや利用のサポート、機材を活用した企画・デザインの相談窓口、町内小中学生対象のものづくりワークショップを中心に活動。

■運営母体:さかわ発明ラボ

佐川町が持つ豊かな地域資源と住民・移住者・専門家の知を掛け合わせることで「生活を豊かにする発明を生む場」を目指している同ラボで、通常より小中学生対象のものづくり体験やワークショップなどを開催している方々が、サポーターとしてプロジェクトの運営に携わる。

■参加人数:3人

さかわ発明ラボ 山千代 航さん / 浅野 航さん / 杉本 和さん


VIVITAとの接点

小金丸:改めてVIVITA ROBOCONへのご参加、ありがとうございました。
早速ですが、まずはVIVITAとの最初の接点に関するエピソードがあれば聞かせていただきたいです。

山千代: 2018年の春頃、(VIVITAの)穴山さんが佐川に視察にいらっしゃったのが最初ですね。その時はまだVIVISTOPのことは知らなかったのですが、こういう場所があるんですよ、というお話を伺いました。じゃあ次回東京に行く機会に見学させてくださいとお願いして、実際にVIVISTOP柏の葉に行くことができたのは6月頃です。

VIVISTOPの子どもたちが積極的にものづくりしている姿に衝撃を受けて、佐川の子どもたちと交流できる機会を持てないかなと思ったんです。穴山さんにロボコンや発明キャンプみたいなことを佐川で一緒にできないかと相談したところ、今年度は多拠点でROBOCONを開催するからどうですか?とお誘いいただいて。ぜひやりたいです、とお返事しました。

小金丸:なるほど。どちらかと言うと、VIVITAからの接触がきっかけだったんですね。

山千代:最初はおそらく、何かを一緒にやりたいということではなかったんですけどね。お互いに似たような活動をしているから、参考になりそうな場所を見に行きたいという動機だったと思うんですけど、刺激を受けました。

佐川の豊かな自然 / さかわ発明ラボ

小金丸:僕も初めて佐川に伺ったときは驚きました。だって発明ラボまで行く途中は自然がたっぷりで(笑)、でも実際に着いてみたら、めちゃめちゃ機械あるやん!って。すでに環境が整っていて、行動に移せばすぐVIVITAの活動が一緒にできると感じました。今年度は発明ラボでロボコンをやる、という流れでVIVITA ROBOCONに参加していただいて、すごくうれしかったです。

山千代:こちらこそ、ありがとうございました。

3人の子どもたちと、のんびり活動

小金丸:実際にVIVITA ROBOCONに参加してみて、準備や制作で苦労したことや大変だったことはありますか?あるいは、独自に工夫されたことがあれば伺いたいです。

杉本:金曜日と土曜日を制作活動の日にしていたのですが、明確にこの時間からこの時間にやると決めずに、来れるときに来てね、というスタンスで回していたんです。そうすると子どもごとに進み具合が異なってきて、サポートする際に考えることが増えてしまって。サポートする時間と、フリーに制作する時間を別に定めたほうが幾分やりやすかったかも、と思いましたね。

山千代:正直なところ、子どもたちは最終形が見えてなかった、という部分があると思います。自分たちが作ったものがどういう場に出て、どういう見られ方をするのか、子どもたちには全く経験に無いことだし、頭に無いんですよね。大人がそこをどう示していくべきなのか、手探りでした。結果的には、それもすごく良い経験だったと思っているんですけれど。

小金丸:そうですよね。子どもにとっても運営の皆さんにとっても今回が1回目ですし、他のどの拠点も手探りでしたね。それはVIVITAにとっても同じことで、どこまで完成度を求めてどこまで介入するのか、というジレンマがありました。そんななか、それぞれオリジナルの環境で、ユニークなロボットが生まれた、という点では、試行錯誤がうまくいったのかなと思っています。

小金丸:金曜日と土曜日を中心に活動していたとのことですが、それ以外の日も制作していたんですか?

山千代:みんな自分のペースでラボに来てましたね。

杉本:例えば、木曜に発明クラブを開催してるんですけど、その前のちょっとした時間で作る、みたいなこともありましたし。

浅野:参加した子どもが3人だけだったから、のんびりした雰囲気で運営できた、というのもありますね。

小金丸:今回はイベントでVIVITA ROBOCONをやりたい!と言ってくれた子が参加したんでしたよね。

杉本:そうです。最初にプレイベントを開催して、そこに来てくれた子どもが5人いて、そのうち3人がROBOCONをやりたいと言ってくれたんです。ただ、行きたいんだけどどうしても日程が合わないという子もいました。もしかしたら、プレイベントには行けなかったけど本当は興味あった、という子もいたかもしれないですね。

小金丸:開催時期に関しては我々の課題ですね。少なくとも学校イベントとの兼ね合いを考えてなくてはいけないと思っています。夏休みの始まりと終わりも各拠点で異なりますし。

衝撃の鹿ロボット

小金丸:それにしても、まひろ君の歩行する鹿のロボットは衝撃的でした。テンプレロボットをベースにアレンジする子どもが多いなかで、今までにない機構を使ったロボットの登場は、VIVITAでも話題になりました。

杉本:彼は最初から自分で作りたいと言って、テンプレロボットからスタートしてないんですよ。テンプレロボットの四角い形やアームは敢えて作らない、という考えが彼の中にあったらしくて、そこからどんどん離れていくようなアイディアを試行錯誤して。一番最初はモーターに車輪をつけた形状でしたが、彼の興味が赴くままに二転三転して、最終的に足で歩かせてみたい、というアイディアを持ってきました。

小金丸:最初はカブトムシみたいな、長い棒のようなものが付いた形状でしたよね?

杉本:そうです。

小金丸:何か虫の形になるのかなと思いきや、本番では鹿になっていたので、「おお!」と思いました。

山千代:競技よりも、ロボット作りに面白さを見出したんですよね、彼は。

小林:鹿になった経緯は何だったんですか?

浅野:もともと鹿を作るはずじゃなかったんですよ、たしか。歩行ロボットの本を探してきて、最初は8本にしたいって言ってたんですけど、それは技術的に難しいので6本歩行のベースを作りました。その上に乗せるものが欲しいよね、と考えていたときに、ふと自宅にある鹿の骨を思い出したらしく、それをラボに持ってきて「これを参考に作りたい」と。

小林:それが家にあるんですね(笑)

山千代:お父さんが林業に携わっていて、よく猪や鹿をもらうそうです。山で解体したときに骨をもらったと言ってましたね。猟師さんが身近にいる環境なんです。

浅野:ロボットを作っているとき、猪肉のお弁当を食べてましたね。

小金丸:ジビエ弁当なんですね(笑)
本人は意識してないかもしれないけれど、彼を取り巻く環境が潜在的に頭のなかにあって完成したロボットなんだな、と勝手に想像してしまいますね。佐川の豊かな自然とマッチしていて、印象的でした。まひろ君の感性はすごいですよね。自然と調和する考えを持ちながら、最新のことにも興味を持って取り組んでいて、すごく貴重な環境にいるんだなぁと思いました。

全国大会に出場した佐川の子どもたち

全国大会で生まれた絆

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小金丸:今回佐川では地方予選を行わなかったので全国大会について伺いたいのですが、実際に参加してみて、印象に残ったことや気付いたことはありますか?

杉本:あれだけの人数が集まる大会となると、佐川ではまず滅多にないことで、それ自体が子どもたちにとって大きな刺激になったと思います。各拠点からいろんなサポーターの大人が集まって、子どもたちが真剣に取り組む姿に大きな声援を送っていることがとても印象的で、あの場にいられただけでも、本当に価値のある経験になりました。

小金丸:まひろの「鹿の角もかりたい」号はエストニア賞を受賞しましたね。

小林:ベストテクノロジー賞です。

小金丸:失礼しました!何故いまエストニアの名前が出たかと言うと、実はエストニア賞でも検討されていたんです。最終的にベストテクノロジー賞に決まったんですが、シンガポール賞やデザイン賞にも名前があがっていて、国内外含めて非常に評価が高かったということなんです。

浅野:うれしい!

エキシビジョン出場した「野をこえ凸をこえ」号

小金丸:浅野さんと杉本さんの「野をこえ凸をこえ」号も面白かったですね。メッセージ性が強くて。

山千代:ボールを取りに行っていないという・・・(笑)

小金丸:杉本さんの最後のコメントも最高でした。エキシビジョンの大人ロボットはみんなが楽しめるように、得点以外のもので何かを表現するという位置付けなので、とても良かったと思います。


10月6日、池尻大橋で開催された「VIVITA ROBOCON 2019 FINAL」の様子

小金丸:他に思い出深いエピソードはありますか?

杉本:自分の出番の前にメンテナンスがあるじゃないですか。その時に、佐川から参加した子どもたちが協力し合っていたことですね。もちろん仲が悪かったと言うことではないんですが、これまであまり話す機会が無かった3人が、全国大会本番ですごく仲良くなっていたんです。

山千代:多分、外国で日本人に会った感じですよね。知らない人に囲まれている状況で「あ、知ってる子!」って嬉しくなって、それで結束が生まれたんだろうなぁと想像します。

小林:全国大会の会場で、佐川のメンバーは家族みたいでしたよね。子どもたちがいつも皆さんの後をついて回っていて、素敵な関係だなと思ってました。

小金丸:佐川の皆さんを見てると、和やかな雰囲気で落ち着きますよね。子どもたちも含めて、皆さん大きな器があるなって思います。例えば何か問題が起きて、他の拠点でパニックになるようなことでも、佐川の皆さんは「まぁ、あるだろうな」と達観した態度だったのがとても印象的でした。

山千代:内心は焦ってるかもしれないですけどね(笑)

浅野:全国大会で僕らの後をついて回っていたことに関して言うと、他の拠点のメンバーと交流できなかったんじゃないかと少し思いましたね。

離れていても、一緒に

小金丸:そうですよね。大会の当日はバタバタするし時間が限られているので、交流する機会が少ないのは課題として認識しています。ただ、交流というのは普段の習慣だと思うので、もし次回開催する場合には、毎日交流できる仕組み作りを考えたいですね。

浅野:他の拠点の活動の様子を見たりできたらいいなと思ってました。

小金丸:VIVIVERSE(※)は使いやすかったですか?
(※VIVITA固有の動画共有プラットフォーム)

浅野:VIVIVERSEはタブレットから簡単にログインができるようにしていたので、子供たちも結構見ていましたよ。

小金丸:VIVIVERSEだけでは足りないというか、何かインタラクティブにできるような仕組みがあったらいいなということでしょうか。

浅野:お互いに作っているところを見たり、どういう風に作っているか、みたいなコミュニケーションができたらいいなと思ったんですよね。

山千代:お互い作っているものについて「そっちどう?」というようなことが起きたらいいなと。特にテーマがなくても、「今こういうことやってるんだ」って共有できることが常にあるといいなと思っています。

メディアが何かはともかく、そういうことが出来ないかと穴山さんと話し合っています。例えばVIVIVERSEも、ROBOCONという共通の話題があれば一番取り掛かりやすいだろうとは思うんですが、今回はまだ、自分でタブレットで撮影してアップロードする習慣が佐川の子どもたちに根付いてなかった。

メディアリテラシーを子どもたちにインプットしていくのか、もしくは、積極的にタブレットにアクセスしなくても自然と相互にやり取りできるような環境を運営側が作るのか、どちらもアリだと思います。

個人的には、発信する方に手を取られるより、今は作るほうに集中して欲しいという思いもありますが。

小金丸:常に映像が共有されていて、相手がそこにいるようかのように「ねぇ」と話し掛けて「何作ってるの?」というレベルでやりとりできたらいいですよね。一緒にいる感じで。

山千代:佐川の子どもたちはシャイなので、VIVIVERSEに動画をアップロードできたとしても、次は電話しよう、テレビ会議しようぜ、となると結構もじもじしちゃうと思うんです。それが一個のハードルなので、垂れ流しがいいんじゃないかと。

小金丸:シャイなのは、岩手の子どもたちも近いものがありますね。やっぱり、共通してアイスブレイクを自然に出来るシステムを一緒に考えていきたいですね。

VIVITAと佐川町のこれから

小林:まひろ君って、シンガポールのクルーとやりとりしていますか?鹿ロボットのデータが欲しいとのことなのですが。

全国大会でベストテクノロジー賞を獲得した「鹿の角もかりたい」号

杉本:当日の交流は出来てないですが、データはお渡ししてます。

浅野:本番前、準備している間にシンガポールの皆さんが「めっちゃいいね!!」って言ってくれて。

小金丸:特に女性の心を鷲掴みにしてましたよね。かわいいー!って。

山千代:これをきっかけに、シンガポールと交流できたらいいなと思ってます。

小金丸:鹿ロボットがシンガポールとかエストニアで流行ってる、みたいなことが起きたらいいですよね。 そう言えば、シンガポールでもVIVIPANEL(※)と言う、組み合わせたらどんな家具でも作れるものがあるんですが・・・。
(※モジュール化されたパネルを組み合わせることで、椅子やテーブル、棚などを作ることができるVIVISTOP Orchard発の家具制作システム)

山千代:あ!あれ、ちょっとやってみたいな、と思ってます。あれがオープンソースだったらな、って。(笑)

小金丸:環境としては佐川でも作れますよね。

山千代:今度、うちで使っているラボテーブルを転用してVIVISTOP GAKUGEIのテーブルを作らせてもらうことになっているんですが、ワークショップができないだろうかと思っているんです。キットで納品するんですけど、制作は子どもたちにやってもらってもいいなと思っていて。

さかわ発明ラボのラボテーブル

小金丸:シンガポールと連携して、VIVIPANELでもワークショップ出来たらいいですね。 そういえば、VIVIWARE Cellを使った大人のワークショップも検討中なんでしたっけ。

山千代:ご相談したのは、ぢちちまつりと言って・・・。こちらにいらした時、アイス食べましたっけ?

小金丸:アイス・・・。美味しいお魚は食べましたけど、アイスは食べてないですね(笑)

山千代:じゃあ、次回ぜひ(笑)吉本牛乳と言う美味しいローカルミルクを盛り上げるお祭りが毎年開催されていて、そこで何かできないかというオファーが来たんです。発明ラボの活動をコンテンツにするアイデアを考える中で、ロボットを作ろうということになり、VIVIWAREを使わせてもらえたらという話になった次第です。これから企画をしていくんですけれども。

小金丸:もうVIVITAとは切っても切れない関係になりましたね!

一同:(笑)

小金丸:ぜひ今後も、お互いの活動を共有していければと思います。これかれも、よろしくお願いします。

sakawa-seinenbu.com


インタビューを終えて

佐川では最初から最後まで、こちらが学ばせてもらえることばかりでした。地元の町に貢献したいという思いと行動が、強制や同調圧力ではなく、子どもも大人もも自然にできていることに感銘を受けました。「共に生きる」という、シンプルなのに力強いメッセージを常々感じます。先日伺った、ぢちち祭りも素敵でした!(小金丸)

さかわ発明ラボには、佐川町の豊かな自然と、町全体が職業や年齢に関係なくゆるやかに繋がりあっているコミュニティの素敵な部分が沢山詰まっていると、活動を通して感じていました。木材や機構にこだわった、佐川町ならではのユニークさが詰まった本番のパフォーマンスはどれも刺激的でした。ぜひこれからも柏の葉だけでなく、色々なVIVISTOPと様々な形でコラボレーションしていただけると嬉しいです!(小林)

縁あって高知県のさまざまなプロジェクトに触れる機会があったなかで、紹介いただいた佐川町の堀見町長。話せば話すほど楽しくて、その翌日に佐川町に行ってしまいました。そこで紹介された”さかわ発明ラボ”はとても魅力的な場所で。充実した機材も魅力的でしたが、何よりここの子どもたちと活動を楽しんでいるスタッフの皆さんに一目惚れでした。私たちが活動の場にしているVIVISTOPとさかわ発明ラボが、お互いの活動に刺激を受け合いながら、子どもたちの活動が促進されていくような関係になっていくよう、山千代さんとはいろんな相談をしています。また一緒に新しい悪巧みをしていきましょう!(穴山)


次回は「VIVITA ROBOCONへの道 #5:VIVITA編」をお届けします! お楽しみに!