こんにちは、VIVITAコミュニケーターのさかいです。 2019年9月から10月にかけて開催された「VIVITA ROBOCON 2019」の振り返りを全6回(不定期更新)に渡ってお届けするシリーズ、第六弾はVIVISTOPにおけるVIVITA ROBOCONへの道のりをご紹介します。
VIVITA ROBOCON 2019において、柏の葉、長岡および全国大会の実況と解説を務めたVIVITAエンジニアのかっしー&VIVISTOP柏の葉クルーのもっちにお話を伺いました。
- 今更ながらVIVISTOPとは
- 海外のVIVISTOP
- これは俺の技術だ!
- デザインとエンジニアリングの両立
- オリジナルのコントローラー
- 大人も大人げなく参加するROBOCON
- お互いを称え合い、割れんばかりの拍手を
- 初めて知る、外の世界
- 自分へのチャレンジ、自分との闘い
- なぜか反省する大人たち
- 対談を終えて
今更ながらVIVISTOPとは
VIVITAが提供する、子どものためのクリエイティブなあそびと学びの場です。学びのカリキュラムはなく、先生もいません。21世紀のクリエイティブツールが揃う環境のなかで、
様々なアイディアを実現するために大人と子どもたちがコクリエーション(共創)しています。
VIVISTOP KASHIWANOHA
VIVITA ROBOCON 2019 in SUMMER 柏の葉には、大人のエキシビジョン参加9名を含む32名が参加しました。
海外のVIVISTOP
エストニア
2018年にオープンしたVIVISTOP Telliskivi。日本とは売っている材料も違うなかで、弊社のエンジニアがエストニアへ渡航し、ロボット製作の土台を固めるために素材集めを行うところから始まりました。
Vivistop Telliskivi | Laste ja noorte loovuskiirendiシンガポール
2019年6月にオープンしたばかりのVIVISTOP Orchard。日本以上に受験競争が厳しいと言われているシンガポールで、子どもたちも、運営する大人も自由にクリエイティブに協働しながら活動するVIVISTOPが設立されました。
VIVITA Singapore - VIVITA Singapore
いずれの拠点も、VIVIVERSEやビデオ通話を通じて、柏の葉の子どもたちと情報交換・交流を行いました。大会当日、学校の都合等で子どもたちの来日は叶いませんでしたが、VIVISTOPを運営する大人のクルーが参戦しました。
これは俺の技術だ!
さかい:VIVITA ROBOCON 2019、おつかれさまでした。
2ヶ月に渡って準備しましたが、柏の葉ではいかがでしたか?
2019年9月8日に開催された柏の葉予選(千葉県)の様子
もっち:今年の柏の葉は、8月のあたまにVIVINATSU(VIVISTOP柏の葉で開催された夏祭り)があったので、大人側はみんなロボット制作はいつからはじめるんだとヒヤヒヤして見ていたんですけど、子どもたちはVIVINATSUが終わったら気持ちを切り替えて一生懸命取り組んでいた印象ですね。
かっしー:これまでに比べると、準備期間が短かったのですが、よく頑張ったと思います。
もっち:柏の葉の子どもたちは、これまでに作ったロボットからバージョンアップしてましたね。去年のロボットの自分のお気入りポイントは残しつつ改良していくとか、常連の しゅんすけ や ゆうた は、最初から自分が作りたいオリジナルのロボットを組み立てていたし、年々見ていると、子どもたちの技術の進化の過程が本当によく現れているなとびっくりしました。一人で作れる子もいたし。
さかい:ゆうた の「軽トラ」はデザイン賞を獲りましたが、作り始める前からあの構想を練っていたんですか?
かっしー:そうですね。今年はキャタピラにすることと、車が大好きだから現実の車を模したデザインにするんだ、ということは明言していました。しゅんすけも、キャタピラに対する熱い思い入れがあって「キャタピラは裏切らない」という名言を残してますが(笑)、自分のお気に入りの技術を軸に据えてレベルアップさせていくんだ、という気概が見えましたね。
もっち:何度か出場した子は、自分が信じる技術、というものがあるみたいですね。
かっしー:しょうへい なら吸引ですね。かけさん は昇降するアームに思い入れがあるし、それぞれ、これは俺の技術だ、と毎回こだわって作ってますよね。逆に、別の子が同じことをすると、真似された!って言う。自分が一番最初にやった、という自負があるみたいです。(笑)
さかい:そうやって先駆けた子から刺激を受けて、初めて参加する子たちは模して作っていくんですね。
かっしー:そうですね、どんどんお互い刺激し合って欲しいなと思います。
ベテラン勢は周りを脅かせてやるんだ、という意識がすごくあって見た目にもこだわるし、スマートなボールの取り方にもこだわってましたね。しょうへい はそれが高じて、自動運転まで取り組みましたし、パフォーマンスにも気合が入ってましたから。プレゼン資料も自分で作りましたしね。
もっち:初めてチャレンジする子たちはロボットを作ること自体に喜びがあって、自分でつくったものが動かせるのが楽しいといった表情で、たくさん練習してましたね。ロボットの作りはシンプルなんですが、操作をしっかり覚えて、どういう工夫を加えたら難所をクリアできるか考えたり、操作の技術を磨いたりして頑張っていました。
さかい:テンプレロボットを作って動くとやっぱり感動しますしね。
もっち:動かしてみて初めて気付くこともあって、そこからまた改良を加えていく、というのは良いアプローチだと思います。
デザインとエンジニアリングの両立
さかい:子どもたちのサポートをしていて、大変だったことや苦労したことはありますか?
もっち:ベテランの子たちが進化していくにつれて、私の知らない技術を搭載しようとするから、聞かれても分からない〜!ということがたまにありましたね。(笑)
かっしー:デザインに凝りたい!という子がどんどん出てきて、もっと可愛くしたいと相談されても、僕にはデザインセンスがないのでどうにもできないことが結構ありました。でも今年は、造形が得意な学生インターンがいて全力でサポートしてくれたので、一気にデザインのレベルが上がりました。
今まではMDF(木質繊維を原料とする成型板)の素材の色のままであることが多かったんですけど、今年は茶色いロボットが少なかったです。
さかい:今年は個性的なロボットが多かったですよね。
かっしー:うれしかったのは、造形に意味を持たせてくれたことです。テンプレロボットの形状って、レーザーカッターで加工して作りやすいこと以外に付加的な価値や意味が少ないんです。
例えば、ももか の「キャンディポップ」号は、自分の好きな曲のタイトルからキャンディのかたちをイメージして造形してるんですね。ゆうた の車や、すみん のクワガタもそうですが、自分の好きな世界をそこに持ち込んで、かつ機能性を損なわないよう両立できているのがすごいな、と思いました。
さかい:エンジニアリングだけじゃなくて、そこにデザインを加味したという点では、レイヤーが一つ上がった印象ですね。
かっしー:そうですね、レベルが格段に上がったと思います。
オリジナルのコントローラー
さかい:今年、準備の段階で独自に工夫したことなどはありますか?
かっしー:今年からVIVIWARE cell(※)がアップデートしたので、作り方がだいぶ変化したんですよね。特に、今年はコントローラーを自分で作らなきゃいけなくなりましたから、十人十色ですごく面白かったです。今まではみんな同じものを使ってたんですが、パーツ組み合わせて自由に作っていいよ、となった途端、かけさんはコントローラーも大きくなったし。(笑)
年々こうやって、子どもたちが創造性を発揮できる箇所が増えたらいいな、なんて漠然と思っています。
(※VIVITAが開発する、プロトタイピングを迅速に行うためのソフトウェアとハードウェアのモジュール型ツールセット)
さかい:コントローラーを自分でオリジナルで作るということは、きっと、教えることも増えたってことですよね。自分でVIVIWARE Cellで組んでと言っても、一人で出来る子は限られていたと思うので。
かっしー:そうですね、でも教えていたのは基本的なことだけです。例えば、手っ取り早く動かしたかったらボタン3つ並んだパーツを使って、左のボタンを左車輪、右のボタンを右車輪に割り当てれば、とりあえず前進して旋回が出来るよ、くらいのことは教えてました。
だけどボタンだけじゃ全然思い通りに動かないから、そこから先はみんな独自に工夫してましたね。ジョイスティックやスライダーを自分で持ってきて。
さかい:ジョイスティックやスライダーの設定は複雑だと思うんですが、子どもたちは自分でやってたんですか?
かっしー:はい。僕は最初の一歩は教えましたが、個別にこれを使え、みたいなことはあんまり言わなかったんです。それでもいつの間にか、みんなコントローラーが出来ていましたね。
大人も大人げなく参加するROBOCON
さかい:子どもってすごいですね・・・。私、ジョイスティックの使い方が最後までよく分からなかった・・・。(※さかいも柏の葉でテンプレロボット作りにトライしました)
かっしー:大人の参加者はコントローラーにあまり工夫がない人が多かったですね。鎌田さんはコントローラーを超適当に作ってたので、全然手で保持できなくて腹で押さえて操作してましたしね。あれはあれで面白かったけど。(笑)
さかい:大人のロボットも多種多様で面白かったですよね。
かっしー:VIVITA ROBOCONは毎年大人も参加してもらっているんですが、今年は今までで一番、大人のレベルも高かったですね。それぞれこだわりがあって。大人は子ども以上に、大人のプライドで何かしら自分の強みを見せなくちゃ、という思いがあったように感じました。
さかい:大人が子どもと同じ条件で同じ土俵に立つことも、VIVITA ROBOCONの面白さのひとつですよね。大人が技術力を駆使したロボットを準備してると、子どもたちが「大人げないぞー!」ってヤジ飛ばしてるのが面白かったです。
かっしー:大人げないってVIVITAでは褒め言葉ですよね。(笑)
お互いを称え合い、割れんばかりの拍手を
さかい:今回初めて、地方予選から全国大会という形での開催でしたが、印象に残ったことや思い出深いことはありますか?
10月6日、池尻大橋で開催された「VIVITA ROBOCON 2019 FINAL」の様子
もっち:私は地方の特色が出たのが面白いと思いました。地方予選のときから、子どもたちが自分の街にまつわるモチーフをロボットに取り入れているのを見ていたのですが、全国大会になるとそれがよりはっきりと目立っていました。地方によって作るロボットのカラーが異なっていて、それぞれの拠点のメンバーがいまここに集まっているんだな、というのが分かって面白かったです。
さかい:そういう意味では柏の葉って、地方の特色はあまり出ていなかったですね。
かっしー:そうなんですよ。ゆうた が地方予選の動画見て、全国大会では軽トラに(千葉県名産の)ピーナッツを追加したんです。
もっち:地方の子どもたちは活動拠点に来る回数や、作業する時間が限られているなかで、しかも初めてのチャレンジでこれだけバリエーションが出たのはすごいな、と思いました。
さかい:全国大会の前は、2回3回出場している柏の葉の子どもたちとギャップが生まれるんじゃないかという懸念が大人側にあったじゃないですか。でも蓋開けてみたら全然そんなことなくて、どの拠点のロボットもレベルが高かった。
それにしても全国大会は面白かったですね、割れんばかりの拍手って本当にあるんだなって思いました。
もっち:お互いを称え合う感じでしたよね。ボールが取れたら喜び合って、カッコいいロボットが出てきたら賞賛して。あの熱い雰囲気はみんなで作りあげたものでしたね。
さかい:本当に良い雰囲気でした。満点を出した出場者が2人もいて、それもドラマでした。
かっしー:あの瞬間は観客が盛り上がりすぎて、僕はマイクを持って喋ってたんですが、自分の声が聞こえなくなったんですよ。もっちの声も聞こえなくて。(笑)それくらいすごかった。
さかい:そして数秒の差で優勝を逃してしまった りっくん が、会場の隅で涙していて・・・。
かっしー:感動したのは、泰蔵さんが彼にも何か賞をあげようと言ってくれて、急遽スタッフ総動員で賞状とメダルをこしらえたことですね。
もっち:VIVITAらしいですよね。
かっしー:ダンボールを切って賞状を手描きして、レーザーカッターでメダルをカットして、紐はないかと大騒ぎして。(笑)
さかい:あれは感動的でしたね。
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初めて知る、外の世界
さかい:地方予選、全国大会と実況してみて、いかがでしたか?
かっしー:すごく面白かったですね。柏の葉の子たちにとっても、外の世界を知ることが出来て良かったと思います。全国大会の前はやっぱり、経験がある自分たちが一番だという意識があったと思うんですよ。でもいざ外に出てみたら、自分たちとは別の世界が広がってた。自分たちが思いつかないようなロボットもいたし、自分たちより点数が取れるロボットもいて、そういう発見があったことが彼らには有意義だったんじゃないかと思います。
もっち:私も、実況しながら楽しかったです。あそこまで会場が熱くなれたのは、みんなが各拠点で自分のロボットに思い入れをもって一生懸命作ったからでしょうし、だからこそ、他の人のロボットも尊重できたのかなと思います。
あの場の競技で盛り上がったのはもちろんなんですが、そこに辿り着くまでにつまずいたところや、こだわったポイントが競技中に見えてきて、いっぱい練習したんだろうなとか、こういう作戦でいこうと思ってるんだなとか、それぞれの競技にみんなのこれまでのがんばりが滲み出ていたのが素敵でした。
さかい:私は司会を務めましたが、子どもたちが緊張していた姿が印象深いですね。ステージ裏で皆ガチガチにフリーズしてるの。でもいざ表に出たら、すごいパフォーマンスを発揮して、本番に強いってこういうことなんだなと思いました。
かっしー:しょうへい も直前までガチガチでしたよね。プレゼンはウェーイってノリでしたけど。(笑)
あと、全国大会で地方の団結力が生まれたのかなと思います。柏の葉の子どもたちも連帯感が生まれてましたし、新潟の長岡も作業しているあいだはお互いあんまり喋ってなかったんですけど、あの場で仲間意識が生まれて、全国大会に来れなかった子の分までがんばるぞ!という雰囲気になってました。
さかい:そうだったんですね。次回は拠点間の交流がもっと生まれるといいですね。
自分へのチャレンジ、自分との闘い
かっしー:全国に出られなかった子がどういう思いをするのか、ちょっと心配だったんですよ、実は。やっぱり悔しいでしょうし、子どもたちに序列ができてしまうのもイヤだし、全国大会に出られなかったから自分はダメなんだと思って欲しくない。
その点はすごく心配で、地方大会が終わる度に、これは負けじゃないよってことを言い続けてきたんです。アンケートを見たら「次もがんばるぞ」って答えてくれている子が結構いたので、少し安心しました。
さかい:もちろん勝ち負けじゃないと思うけど、その結果を受け止めるのもひとつの経験ですね。
もっち:そうですね。誰かに勝った負けたというより、みんな自分のなかに目標があって、練習では出来たのに本番でうまくいかなかった悔しさや、自分との闘いをしている印象でしたね。
さかい:確かに。あくまでもオリジナルのロボットを考えて作るから、誰かとの勝敗じゃなくて自分へのチャレンジなんですね。
かっしー:VIVITA ROBOCONで一貫して掲げているポリシーがあって、対戦は絶対にしないと決めています。昔、対戦型ロボコンをいくつか見たんですが、観戦してるだけの立場なのに相手サイドにヘイトの感情抱いちゃったりとか、悔しさとも違うモヤモヤした気持ちを抱いたりとか・・・。
それで、対戦はしないと最初から心に決めていたんですが、それが良かったと思っています。
さかい:全部終えて、こうして振り返ってみると、そういうROBOCONだったんだなって分かりますね。
なぜか反省する大人たち
さかい:VIVITA ROBOCON 2019、総じて楽しかったですね。
もっち:楽しかったですねぇ。
かっしー:そういえば、もっちの「捕食されるひとでちゃん」号はどうでした?感想を聞きたいです。
もっち:ひとでちゃんね。法螺貝が役に立たなかったですね。
一同:(笑)
もっち:やっぱりステージには魔物がいますね。
かっしー:魔物がいましたか。次の構想とかあるんですか?
もっち:次はどうしましょうね。ひとでちゃんはずっと作っていきたいから、次は子どもが生まれるとか?
かっしー:ヒトデってどうやって子どもが生まれるんですか?
もっち:卵を生む種類もいれば、分裂して増えていく種類もいるらしいです。
かっしー:分裂!?アメーバみたいに細胞分裂するってことですか?
もっち:そうです。
さかい:次が楽しみですねぇ。私は来年また、司会をやるんでしょうか・・・。
もっち:いい司会でした!
さかい:噛み噛みでしたけどね・・・。さかいさんガチガチや!ってインターン生が笑ってましたけどね・・・。もし来年もマイクを握ることがあれば、もうちょっと精進したいと思います。
かっしー:僕もYouTube見返して凹みましたよ。もうちょっと気が利いたコメントできたんじゃないかと思って。開会宣言なのに宣言するの忘れましたし。
さかい:かっしーともっちの実況は最高でしたよ。って、なんの反省会か分からなくなってきましたね・・・。
対談を終えて
今回は初の全国大会開催かつ初のVIVISTOP外での大会開催で、無事に開催できるか、子供たちにとって良い体験を提供できるか、凄まじく不安だったのを思い出しますが、おかげさまで史上最高の盛況で終えることができ、子供たちからの評判も良かったようで安心しています。今後とも子供たちの楽しい体験とスキルアップのために邁進していきたいです。(かっしー)
国大会は会場全体が本当に熱い空気につつまれていて、勝手に夏のできごとのような記憶になっていました。しかし実際に開催されたのは10月で、思い返すと少し不思議な気持ちです!(もっち)
昨年VIVITAにジョインした私にとってVIVIWAREを使ってロボットを作ることも初めてなのに、初めてのROBOCONでなぜか司会をやることになってしまい、初めてづくしで何がなんだかよく分からないまま熱狂の渦に巻き込まれて、あっと言う間にすべてが終わってしまいました。夢のようでした。今回のROBOCONに参加した各拠点のインタビューを記事にまとめながら、ひとりひとりの挑戦の過程を辿ることができ、皆の笑顔や涙とともにいっそう思い出深いものとなりました。次回のROBOCONがどのように進化するのか、とても楽しみです。(さかい)